短編
□さりげない優しさ
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さりげない優しさ
こんなにも暑い日があっただろうか。
ふと朝テレビで見た天気予報を思い出してみる。確か今日は一日中曇り空とか言っていたはずだ。くそっ天気が外れるにも程がある、と俺は心の中で舌打ちをした。
耳障りな蝉の鳴き声、ジリジリと焼けるような暑さ、そして頬を伝う汗に纏わり付くワイシャツ。その一つ一つがとても気に障る。
そしてそんな炎天下のなか全校集会が行われていた。
わざわざこんな暑い日に集会なんてやらなくても……と思う。それは俺だけではなく皆もそう思っているはずだ。
しかもこんな時に限って体育館が工事中。なので校庭でやる事となった。
「暑い…」
いつの間にか聞こえてくる声が校長のものに変わった。このままいけばあともう少しで式が終わるのだが、それは無いだろう。何故ならゴドウィン校長の話はいつも長い。あまりにも長すぎて生徒が倒れてしまった事もあるほどだ。今も長々と喋っているが話の内容が頭に入ってこない。それはいつもの事なんだが今日は暑いので特にだ。
前からジリジリと日が差しているので目も開けられないし顔が痛い。なので仕方なく俯く形になる。そうする事で直接顔に日が当たらなくなるし少しはマシだと思った。
それから数10分経ったがゴドウィン校長の話しはまだ終わる気配がない。
やばい…クラクラしてきた。
こんな事いつもなら無いはずなんだが、この暑い中ずっと立ちっぱなしは正直辛い。せめて座りたいが皆も同じように暑い中立っているのに自分だけ座るのは…と変な意地があった。
俯いてフラフラしていると急にフッと自分に差している日が消えた。光が遮断されただけで随分と楽になった気がする。
しかし何故急に…と思い顔を上げてみる。
「ジャック…」
俺のすぐ目の前にはジャックが立っていた。思ってもみなかった出来事に目を開く。
「遊星」
そして腕を組み、顔を歪ませているように見えた。目が痛く、うっすらとしか目が開けれなかったので正直どんな顔をしているのかは分からない。
「ジャックどうして此処に…」
集会での並び順は出席番号順だ。なので俺は結構後ろの方で先頭に近いジャックが何故此処にいるのかが分からなかった。
「……何でもいいだろう!」
その質問に対して何とも微妙な間を空けたジャックはフンっと鼻を鳴らしてクルリと前に向くとそれから喋らなくなった。
「……」
正直訳がわからない……が今はそんな事どうでも良かった。
ジャックが来てくれたお陰で日陰ができたからだ。
そこで静かにジャックの背中におでこをつけて寄り掛かってみた。ジャックはまた鼻を鳴らしただけで文句も何も言わなかった。それに安心した俺は寄り掛かったまま目をとじる。
そうすると一気に気が楽になった…さっきの辛さがまるで嘘のようだった。
思い上がりかもしれないが、もしかしたらジャックはこのためにわざわざ来てくれたのかもしれない…と思った。もしそうでなくてもジャックが此処に来ただけでとても嬉しかった。
「ジャックありがとう。」
そう俺が言えばジャックが笑ったような気がした。
end
ここまで読んで下さりありがとうございました!!
なんとな〜く思いついた話なんですが、ありきたりですみません(>_<)よろしかったら感想などくれると嬉しいです!