喜八サマから相互記念に頂いた
「ミズアベ初ちゅー」です!
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たまには読書でもして肥やしにしようと立ち寄ったのが全ての発端。







閑散とした寂れた図書室。

その場所に不釣り合いな人物というのがいるわけで。



なんでこいつがここにいるのだろう。



「……おい」



呼び掛けても反応がない。続けて名前を呼んでみる。水谷、と。それでも反応はない。

図書室に設置された多くの大テーブルの一角に水谷がいた。テーブルに突っ伏して、どうやら爆睡のようすだ。

突っ伏す水谷に敷かれているのは数学の教科書や問題集、筆記用具等の学習に必要な一式だった。勉強していたらしい。

水谷の肘に角の方だけ押さえ付けられていた問題集を抜き取って、それを見遣る。思わず嘆息が漏れた。

一度解いた形跡があるがそれは間違っていた。しかしその横に答えが正しいものになるまで何度も過程の計算が書き込まれていた。問題集が真っ黒く埋め尽くされるまでに。



「うわ、」



意外と真面目。というよりも努力家なのか。

図書室で勉強なんて普段の水谷がするはずがない。それなのに今こういう状況にあるのは、きっと、いや確実に、期末テストが迫ってるからだ。

赤点をとったら試合に出れないという、田島や三橋にとっては悲鳴ものの決まりごと。周りからすれば赤点の危惧の少ない水谷もそれなりに危機感は抱いてるようで、だからこうして静かな図書室で勉強をしてるのだろう。

水谷の性格からして家では家中にある誘惑には勝てないだろうし、教室で勉強しても誰かに誘われたらすぐそっちに走ってしまうだろう。

それを知っている本人だからこそ図書室という場所を選んだのは関心するが、途中で寝てしまうところがまだまだというかそれが水谷というか。

でもまあ、頑張りだけは伝わったぞ。おまえもおまえなりに努力してるんだな。うんうん、いい子いい子。

もう一度問題集に目を落として目についたのは、解きかけの問題だった。何回解いても答えが導き出せなかったらしく、どうやらそこで諦めたらしい。その次からの問題は解かれていない。

思わず苦笑してしまう。水谷の飽きやすい点が真面目になりきれない原因で、水谷らしいところだ。

短期集中型だもんなあ。明らかにこいつは。



「頭が緩いしなー」



全く関係も確信もないことを独り言として呟いて、水谷の頭に問題集を振り落としてみる。



ぱこん。



小気味よい音がして、今まで爆睡していた水谷の瞼が簡単に動いた。ゆっくりと薄く開かれた瞼。そこから覗く瞳と目が合った。しかし意志は現に戻ってきてないようで、暫く俺の顔を眺めたところで再び瞼を閉じた。

それを慌てて制す。



「寝るなって」

「………?」



また瞼を開いてもやはりただぼーっと見てくるだけで起きる気配はない。

駄目だ、完全に寝ぼけてる。



「水谷、起きろ」

「………」

「風邪ひくぞ」



そういうと何故だか水谷はいつもよりも破顔して、最高に緩い笑顔を浮かべた。つられて俺も少しだけ笑う。

今の季節じゃうたた寝したくらいでは風邪なんかひかないだろうが。もし万が一ってこともあるから一応は忠告しておく。



「な、風邪ひくって」



これで反応しなかったらもうこれ以上は何も言わないつもりだった。だが、水谷は突っ伏していた上半身を起こし、俺に向いた。そして両手を伸ばして両側から俺の顔を掴んだかと思うと、自分のほうへ引き寄せた。虚をつかれ、されるがままに引き寄せられた俺は。

固まった。





俺の唇に水谷の唇が重なった。





きっと3秒くらい。

そのあと水谷のほうからゆっくりと唇を離し、水谷はふにゃりと笑う。そしてまたテーブルに突っ伏して寝始めやがった。その間、俺はというと頭の中が真っ白で何が起きたのか理解できずにその場で固まっていた。

そして理解できた途端。



「……っ!!?」



後ろに飛びのくと、背後にあった本棚にぶつかってしまった。が、ぶつかったことによる背中の痛みよりも何よりも。

……今、こいつは何をした?

え、ええ、えええ。

俺の記憶が正しいとすると、俺の思考が間違ってないとすると。俗にいう、あれですか。

キッス、接吻、口付け。



「……え、え?!」



何があったのかは分かった。でも理解はできない。

目の前で眠りこける水谷を見て、俺のとった行動は。

逃避。

とりあえずその場から全力で逃げ出した。



全力疾走している間に衝撃的すぎて現実離れしている今しがたの出来事を単なるイケナイ夢だと思い込もうとしたが。





唇に残る感触は色濃く、それを良しとしなかった。





























一方、図書室で眠り込んでるはずの水谷はというと。





テーブルに突っ伏す体勢のまま真っ赤に染まっていった。顔に熱が集まるのがわかる。

一体何をした俺は!

その瞬間は何も考えないで身体だけが動いて。でもあの時阿部にキスしたいと思ったのはまぎれもない事実で。

だからって。



だからって。



「…俺は変態だ……」



これからどんな顔して会えばいいんだよ。

阿部の唇の感触を知ってしまった。もう阿部の目は見れないと思った。阿部も二度と目を見てくれないと思った。





阿部の唇は柔らかく、甘かった。





きっと忘れられない。









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本当に、こんな素敵な小説を頂けるなんて、、山口は幸せです!
萌え死むかと思いました!

私的に、水谷がゆるーい笑顔を向けたとき阿部もつられてちょっと笑ったってとこ萌えですっ!
つーかあたしも微笑みました(笑)

喜八サマの小説は引き込まれます!これを読んでるとき私は阿部になってます!(@゚▽゚@)←どんだけ!

本当に、本当に!ありがとぅございました!゚+。(*′∇`)。+゚

山口は、これからもずっと喜八サマを愛します!!(@゚▽゚@)
20080602.


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