『小さな事件』


「……ない……ない……ない…………あれ?こっちか?………ない…」


イザークはかれこれ1時間近く寝室をバタバタと動き回った


「どこにいった………?」


サァーっと顔から血の気が引くのがわかる

「……指…輪……ない………」

ディアッカから誕生日に貰ったペアの指輪

ディアッカからイザークへ
イザークからディアッカへ

互いに贈った大切な指輪


「ない………」

イザークは床に這い蹲り、ベットの下を覗き込んだ


腕を伸ばしベットの奥まで探すが見つからない


「どうして………」


恥ずかしがり屋のイザークは受け取った指輪をはめて、外出した事が無かった

ディアッカは何度も指輪を身につけて欲しいと懇願したが……

イザークは頑なに拒否した

(今更…照れるじゃないか……)

そんな事を思いながら
その代わり……

1人の時にこっそりとこの寝室で眺めていた

(絶対にこの部屋にある筈なんだ!!)


いつもならチェストの一番上の右端のリングケースに納まっている


1週間ほど前に見た時は確かにそこにあったのだ

「うぅ…………そんな馬鹿な………」


クローゼットの中

机の下

本棚の後ろ

………どこを探しても見つからない


(まかさ…泥棒?)


と思ったが金品が盗まれた形跡は無い


「うぅ………何故無いんだ……」


瞳に今にも溢れ出しそうなくらい涙を浮かべイザークはペタリと床に座り込んだ


「どうしよう……………」


イザークは悲劇のヒロイン然りの落ち込み様で半ば放心状態になった


「!!イザーク?何があったの?この部屋っ!泥棒!!??」


その時…指輪を贈った張本人が寝室に入ってきた

引き出しやクローゼットの中の物がグチャグチャに放り出された…………荒れた寝室に入ってきて驚きの声をあげた


「イザーク?」

俯いたイザークの近くに寄ると、その顔を覗き込んだ

「イザ?」



イザークの瞳が濡れている

「な……んでもない………掃除してた」

そう言うと、イザークはゆらりと立ち上がり床に落ちている物を拾い上げ片付け始めた

「イザーク?」

どう考えても掃除をしてた風には見えない荒れ様


ディアッカはイザークと、荒れた部屋を交互に見ると(はは〜ん)と……何かを確信した様に気付かれない程度に小さく笑った


そして片付け始めたイザークの側に近寄ると正面に立った


「…………何だ……」


「コレ……無くさない様にと思って……コレならイザークもいつでも身に付けられるだろ?」


ディアッカはすっとイザークの首筋に手を伸ばした


「え?…………」

キラリと光るそれにイザークは目を丸くした


シルバーのチェーンが通された指輪が静かにディアッカによってイザークの首に掛かった

「きっ…!貴様コレっ!」

「ベタだけど……ネックレスにすれば…服に隠れて見えないから…イザークでもいつでも身に付けられるよね?」


ディアッカが意地悪く笑った

「っ…!オレは別にコレを探してたんじゃないからなっ!!!」


「あれ?掃除してたんじゃなかった?」

ディアッカはさらにニヤリと意地悪く笑う


「〜〜オレの物に勝手に触るな…バカ野郎……」

イザークはキッと睨んだ

「ごめんね…まさかベソかいちゃうほど探してくれるとは思わなくて」

「ベソなんてかいてない!」


声を荒げて否定するイザーク

「オレも…お揃いにしちゃった」

ディアッカは自分の首にかかっているネックレスをイザークに見せた

「〜〜〜ディアッカ何て嫌いだ」

「ごめんね…その代わり掃除手伝うから許して?」

軽くウィンクしたディアッカはイザークのご機嫌を伺う

「フンッ当たり前だ」と…言ったイザークだが、その腕はしっかりとディアッカの腰に回りギュッと背中を抱き締めた


そして、ディアッカが優しくイザークを包み込んだ

ある休日の小さな事件

20130108


拍手ありがとうございます。お礼の気持ちのSs小説です



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