金銀小説

□開戦前夜
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「あの戦争で…大切な物を失って…」

「……………」


「やっと平和になると思ったのに…ね」

ディアッカがイザーク方に体を向けたその刹那


「………!!イザーク……」

ディアッカは声を荒げた


「えっ?」


イザークはディアッカの声に驚く


淡々と語っていた無表情な声からは想像もしていなかった


涙がイザークの頬を止めどなく流れ落ちていたのだ…

イザーク本人も…自分が涙を流している事実に気が付くのが遅れた


「イザーク…」


ディアッカは咄嗟にイザークを抱き締めた

先の戦争より…遥かに痩せてしまい、細くなったその体にどれ程の重圧がのし掛かっているか…
側にいるディアッカには痛いほどよくわかる


「……人は何故過ちとわかっていて再び戦争を繰り返すんだ…」


抱き締めたイザークの体が涙で小刻みに震える


静かに静かに…イザークは涙を流した


ディアッカはゆっくりとその背中を撫で…落ち着かせ様とする


「…………ディアッカ…」

「ん?」

突然、イザークが話し掛けた

「死ぬなよ…」


イザークの蒼く光る瞳が閃光の眼差しをむける


「あぁ…イザークも…」


そう言って……どちらともなく…軽いキスをした


―――――――――

戦争が始まる


あと数時間だけの平和な時間が…終わりを告げる



20110801
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