金銀小説

□傷痕
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「まさか…イザークがその傷消すために病院行ってるなんて知らなかった」


朝食を終え直ぐにオレの運転するエレカで病院に向かった


「フンッ」

イザークはオレとは視線を合わせず、外の景色を眺めていた

聞けば、数回病院に通い診察を受け……今日と言う手術日が決まったそうだ


(イザークが…その傷消すために病院に行ってたなんて…知らなかった…)


今度は口に出さずオレは心の中で繰り返した

「………」


イザークは病院に向かうエレカの中、再び言葉を話すことは無かった


――――――――――

病院に到着し、手術の流れの説明を受ける

約1時間程度で手術は終り、その後2時間安静にしていれば包帯が取れるそうだ


(さすが、プラントの医療技術………)

あえて消せる傷を残したイザークは……
どんな思いで、その傷を消そうと決めたのか…


(俺に話して欲しかったな…)

確かに最近仕事が忙しくて、イザークと共に休暇など取れなかったが………



「ディアッカ…」


待合室に座っていると手術着に着替えたイザークが俺に声をかけた


「もうすぐ時間だ…」

「うん…イザーク頑張ってね」

「あぁ…簡単な手術だ…たいしたこと無い」

イザークは目を伏せる



「イザーク…?」

手術前に緊張しているのか、幾分顔や言葉が強張っている


「………ディアッカ…この手術は俺なりのけじめだ…」

「うん…」

「手術が終わったら…お前に最初に俺の顔を見て貰いたい………」

その…サファイアに光る瞳が俺を真剣な眼差しを向ける

「イザーク…」



「ジュールさんお時間です」
俺の言葉を遮るように看護師が時間を告げにきた



「じゃぁ……行ってくる」

イザークは踵を返し真っ直ぐに手術室に向かって行く


――――――――――
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