金銀小説

□変わらぬ未来
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言い訳も虚しく、スゴスゴと師匠と共に中に入ると…

「うわぁ…」

オレは感嘆の声をあげた


数年ぶりに見る日舞の舞台

中央には松の絵が描かれた緞帳が吊られ、金の糸で刺繍が施されている

総檜の舞台はふわりと檜の馨りが立ち込める


その舞台上で藍色の着物と袴を身に付け、背筋をピンと…凛々しく舞う姿を見つけた


「やっぱり…ディアッカは筋が良いね」

師匠が耳打ちする


金髪紫眼…そして褐色の肌…

そのおよそ日舞とはかけ離れた容姿とは裏腹に…
その精悍な顔立ちに不覚にも見とれてしまった


(普段からあれくらい真面目に仕事をして欲しいものだな…)

見とれていた事実を隠す為にオレは心の中で言い訳をする

(昔から…この顔が好きだったな…)

いつも優しかったディアッカの時折見せる真剣な眼差し

(よかったな…ディ…)

ずっと戦争と事後処理の毎日に追われた日々から……少しずつ自由な時間が増えてきた

やっと自分達にも平和を実感出来る時がきた


オレは師匠が部屋の隅に座布団を用意してくれたので、そこに座り…
ディアッカの稽古風景を見守った



――――――――


「イザーク来てくれたんだ」

稽古が終わるとディアッカがオレの元え駆け寄ってきた

「あぁ…仕事が早めに片付いたからな…」

ニコニコと日舞を舞っていた時とは違ういつもの顔がそこにはあった
(本当は、舞っているディアッカが見たかったら早く来た)何て………口が避けてもオレは言えない


「どうだった?久しぶりのオレの舞いは?」


「……貴様腕が鈍ったんじゃないか?舞いにキレがなかったな…」

…………見とれてたなんて口が裂けても言えない
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