金銀小説☆拍手☆

□拍手(2012年4月15日まで)
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君を守るよ

例え…世界中を敵に回しても


――――――――――

『逃亡前夜』


「イザーク・ジュールを銃殺に処す」


戦後まもなく開かれた軍事裁判の判決が下った


オレはゆっくりと瞳を閉じ、判決文を聞いていた

悲しみや死への恐怖…何も感じなかった



―――――――
銃殺の死刑判決後オレは1人、独房へと入れられた


目線を上に向けるとそこには格子のはまった窓が僅かに空いていた

月明かりが室内に入る


「綺麗だな…」


見上げると、ポツリと言葉が漏れた


この独房へ来て以来、初めて発する言葉だった


(ディアッカも見ているだろうか…)


先の戦争で、三隻同盟のアークエンジェルに身を寄せた恋人の事を思い出した

ディアッカは戦後そのままオーブに亡命した


「イザークも来いよ」
と一度誘われたが………



「最後までプラントで、コーディネーターとして、Z.A.F.Tとして…死にたいんだ…」

「ハハッ…イザークらしいな」


とディアッカは笑っていた

本当は、嬉しかった…
直ぐにでもその暖かな恋人の温もりを感じたかった


今となっては叶わないが…

戦後の事後処理の為に、オレは毎日奔走した
どうにかコーディネーターとナチュラルとの間に平和協定が結ばれ安堵と共に…軍の編成や議会の開催……
あっという間に時は流れ、やっと…自分自身の後始末が終わる


(何とか、部下の重罪は免れた)

シホを初め、他の部下は重罪は免れ除隊や除籍……各々処分を受けたが


(極刑はオレだけで十分だ)


すでに母エザリアは、戦争犯罪人として……銃殺された


(もう…残されたのはオレだけだ…)


もう………………



疲れた









最後に

会いたかった



その時、
――――――ゴンッ


突然ドアの向こうから鈍い音が響いた


オレは振り向くと

ガチャガチャとドアの鍵を弄る音が聞こえた


ぎぃいぃ…
と重たい鉄の扉が開くと…


「!!!」


「イザーク!!!」


名前を呼ばれると共に抱き締められた


「ディアッカ…」


目の前に現れたのは


先ほど思い描いていた恋人の姿だった
看守が2人、白目を剥いて倒れていた

「ごめん…」

ディアッカはオレを抱き締め、弱々しく謝罪の言葉を囁いた


「……っ…どうして…お前がここに…」


抱き締める腕の力が外れ、ディアッカがオレの目を真剣な表情で見詰めた

「イザークを拐いに来た」


「…!お前…」


「イザークのいない…オレの人生なんて…あり得ない…色々、準備に手間取って迎えに来るのが遅くなってごめん…」


ディアッカのその言葉が嬉しかった



「…………ありがとう…」


最後に会えて嬉しかった

だから素直になれた

最後に、一番会いたい人が会いに来てくれた
それだけで十分幸せだった


「………母上も戦争の責任を取り…亡くなられた。オレだけが逃げるなど出来ない……」


「エザリアさんは生きてるよ…」

「え?………だって…」

数日前、刑が施行され、数分間だが…遺体にも対面が許された


「オレの親父が…エザリアさん見殺しにするハズないっしょ?」

ディアッカはウインクをしてニッ…と笑った

「今は親父が匿ってるから安心して?」


オレは唖然として、目眩が起き一瞬体がふらついた


「!!イザ!!」


ディアッカは咄嗟にオレを受け止めた
「プラントとコーディネーターを守ろうとしたイザークが……死ぬべきじゃない」


イザークの痩せてしまった体を抱き締める


「戦争の責任は…生きている全ての人間の責任なんだよ」


ディアッカの言葉が僅かに震えている

(ディ…泣いてるのか?)


「だから…オレは…」


そう言った時


「ディアッカ!!後ろっ!!」

異変を感じた別の看守がディアッカに殴り掛かろうとした




ドサッ…


瞬間…人が倒れる音がした

見ると看守が倒れている
見事な足技が極り、気絶していた

「バーカこれでも元ザフトレット嘗めるなよ…緑に負けるかよ」

ちらっと看守を見る
ディアッカのその紫の瞳が冷酷に向けられた


「オレは…例えイザークが拒んでもココから連れ出すつもりだから…ね」


ディアッカのオレを見る瞳は……それでもやっぱり優しくて、その声は、甘く優しく中枢神経を麻痺させる

「貴様は…とんだ愚か者だな」
オレは苦笑いを向けた

「そうだね」

ディアッカは満面の笑みだった


――――――――――


「とりあえず、オーブに行くからね」

ディアッカは用意周到に逃走ルートを準備していた

その後、死んだと思っていた母上に再開した後オレはそのままオーブに行くことになった

さて…生き延びたこの命、どう生きていこうか……



―――――――――――

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