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□Next stage
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「……ただいまー」
夕方。学校から帰ってきたツナは、そっと玄関のドアを開けると、その隙間から中を窺いながら小さな声で言った。いつも賑やかな家の中はしんとしていて、誰の返事も返ってこない。
(母さん達、買い物へ行ったのかなぁ……)
こっそりと靴を脱いで、足音を立てないように廊下を進む。
(……父さんも、いないみたいだ)
キョロキョロと家の中を見回し、手と足を使ってこそこそと階段を上がりながら、ツナはホッとしたように息を吐いた。
なぜ、ツナがこんな状態になっているかと言うと、実の父親……家光に原因がある。
つい先日、突然ふらりと家に帰ってきた家光とツナは、親子にも関わらず口では言えないようなとんでもないことをしてしまった。それからというもの、ツナは父親の姿を見るだけでその時のこと思い出してしまい、羞恥やら何やらで顔もまともに見れなくなってしまって……。
これまで以上に、父親を避けるようになってしまったのだ。
しかも家光はしばらく家にいるらしく、ツナはなるべく顔を合わさないように、必要な時以外は部屋に籠もるようになってしまった。
だが、避けていても頭の中に浮かぶのは父のことばかり。
(あー、もう…俺、どうしちゃったんだよ……)
家光のことを考えると、何とも言えない感情が湧き上がってきて、いろんな想いで頭がぐちゃぐちゃになってしまう。実の父親に、こんな気持ちになるのはおかしいのに。
「はぁ…晩ご飯まで昼寝しよっと……」
ぶんぶんと頭を振って妙な気持ちを紛らわすと、ツナはため息を吐きながら自室に入ろうとした。
だが、
「っ、ぁ…!?」
ドアを開けた瞬間、突然視界が真っ暗になって身体が飛び上がった。目を誰かの手で覆われている、と分かった時には、背後から伸びてきたもう片方の手に動きを封じられてしまう。
そのまま強引に部屋の中に押し込まれてパニックを起こしかけたツナは、だが抱き込まれた瞬間良く知った匂いに包まれ、さらに驚愕した。
と同時に、心臓が一気に跳ね上がった。
「と、父さんっ…!?」
「お、良く分かったなぁツナ」
あっさりと解放され後ろを振り返れば、父親の家光がにっかりと笑いながらツナを見下ろしていた。ツナは慌てて距離を取ろうと……したのだが、
「うわっ…!?」
「ツナぁ、久々の二人っきりだぞー」
その前に思いっきり抱き付かれて、再び身動きが取れなくなってしまった。