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□Unclear
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「あ…その……」
ツナは、肌に触れる刃の感覚に、少し怯えたように身体を竦ませながらも、
「今は…骸に会っても大丈夫かな、って思って……」
「………」
「あの、何となく…なんだけど……」
やはり、理解できない。
人の顔色を窺い、いつもおどおどしているのに、瞳だけは真っ直ぐにこちらへ向けていて。極度のお人好しなのか、おせっかいなのか、威勢良く突っ掛かってきたかと思えば、慌てたように距離を取って。
つかめそうでいて、決してつかめない。
(全く、気に入らない……)
人を惑わせる力を持つこの自分が、こんな小さな生き物に、逆に惑わされているなんて。
(このままでは、何だか癪ですね……)
この苛立ちが何なのか、何となく分かっているけれど。
自分だけが振り回されているのが、面白くなくて。
(少し、からかってあげましょうか)
この純粋の塊のような、真っ白な色をした少年を。
骸はツナの首筋から刃を下ろすと、くすりと笑った。
「あ、あの……」
不穏な気配を感じ取ったのか、ツナはちょっと焦ったように、
「じ、じゃあ俺、もう帰るね…?また、来るから……!」
それだけを言い残して、そそくさと部屋から出ていこうとする。
(ほら、また……)
自分から近付いてきたくせに、すぐに離れようとして。
(でも、逃がしませんよ)
骸は、自分に背を向ける少年の腕をつかんだ。
「えっ……?」
突然のことに驚いて振り返るツナを、骸は無言で部屋の奥へと引っ張っていく。そして、先ほどまで自分が座っていたソファーへ放り投げた。
「ぶっ…!いって…なにす…」
受け身など取れるはずもなく、無様にも顔からダイブするツナ。
骸は、起き上がろうとする小さな身体を組み敷いて、ソファーへと押し付けた。
「な…なに…?むく…」
「そうですねぇ…確かに君の身体を頂くのは、もう少し先にしても良いと思っているのですが……」
怯えたように見上げてくるツナの顔を覗き込みながら、何も知らないであろうこの少年を、骸は無性に虐めたくなった。
「……暇潰しに、能天気な頭をした君に分からせてあげようと思いまして」
「へっ…何を……わぁぁっ!?」
聞き返そうとした瞬間、手足に何かが絡み付いてきて、ツナは飛び上がった。見ると、植物の蔓のようなものが身体にしゅるしゅると巻き付いてくる。
それは、骸の幻術が生み出したものだった。
「ちょっ、なに…はなせよっ……」
「暴れられると面倒ですので」