Main
□Unclear
1ページ/7ページ
「……また、君ですか」
薄暗い部屋の中。
古びたソファーに腰を掛けながら、六道骸は呆れたようにため息を吐いた。オッドアイの瞳を、部屋の入り口へと向けて。
そこには、一人の小柄な少年が立っていた。
「ご、ごめん……ケガの具合、どうかなって思って」
少年……沢田綱吉が、気遣うように、だが躊躇いがちに口を開く。
数週間前、ツナ達はD.スペードとの闘いで、かなりの傷を負った。特に、骸はデイモンに身体を乗っ取られ、ようやく解放された頃には酷い重症だった。
ツナ達は何とかデイモンを倒し、平和な日常に戻ったのだが……。
「その…ケガしたの、俺のせいだし……」
デイモンを倒すためとはいえ、ツナは骸の身体に攻撃をして、大きな傷を負わせてしまった。それがずっと気掛かりで、それからというもの、ツナはちょくちょく黒曜ランドを訪れては、他の仲間には内緒で骸に会っていたのだ。
「……ですから、怪我はもうほとんど完治したと言っているでしょう」
「でも……!」
入り口を少し入った所で突っ立ったまま、遠慮しているからかそこから近付こうとはしないツナに、骸はぶっきらぼうに返す。
確かに、あれだけの大怪我が嘘のように、骸の身体は何ともないように見える。幻術を使っているからなのか、何か特別な治療を受けたからなのかは分からないが。
それでも、心配なものは心配な訳で……ツナはまだ窺うように、骸をじっと見つめている。
「……はぁ」
「っ……」
すると、骸が再び大きなため息を吐いて、ゆっくりと立ち上がった。そのままこちらに向かって歩いてくるので、ツナはびくりと身体を強ばらせる。
「全く、君も変わってますね。敵である僕の心配をして、こんな所までのこのこと一人でやってきて」
「っ、だって……」
やがて骸は目の前で立ち止まると、スッと細めた目でツナを見下ろした。
骸は一応ツナの霧の守護者なのだが、かつてツナ達を襲った敵であり、今もツナの身体を狙っている。敵なのか味方なのか分からない存在だ。
それなのに、ツナは骸のことを自分のことのように心配する。
骸は、そんなツナの考えが理解できなかった。
「骸には、いろいろ助けてもらったし……」
理解できないと同時に、何だか苛々とした。
「……呑気ですねぇ。今この瞬間に、僕に身体を乗っ取られるかもしれないのに」
「っ……!」
スッと、どこからか取り出した三叉槍をツナに向け、その細く白い首筋に突き付ける。