Main
□Immorality
1ページ/8ページ
「ツナっ!ボール行ったぞ!」
「ぶふっ!」
前方から飛んできた硬いバスケットボールを、ツナは見事に顔面でキャッチした。そのままぶつかった勢いに負けて、べしゃりと床に倒れ込んでしまう。
「じ、十代目っ!?」
「大丈夫か!?ツナ!」
慌てて駆け寄ってくる二人の親友に、鼻を赤くしたツナは顔を押さえながら、内心は痛みに悶絶しながら、大丈夫だと無理に笑ってみせた。
勉強や運動、何をやらせてもダメダメなことで有名な少年、沢田綱吉。
今日も体育の授業中に、何度もすっ転んだりボールを身体にぶつけたりと、究極のドジっぷりを発揮していた。
だが、心配をしてくれる優しいクラスメイトは、獄寺や山本の二人くらいなもので……。
「お前のせいで負けたんだからな!」
授業が終わり、放課後になった体育館で、ツナはクラスの男子生徒達に囲まれていた。
運悪く、獄寺は用があるため先に帰り、山本も部活に行ってしまって、一人になったところを捕まったのだ。
複数の生徒に詰め寄られ睨まれて、ツナは泣きそうになりながら俯いた。
「ご、ごめん……」
(((うっ……!)))
クラスメイトが怖いからか、ボールに当たった所が痛むからか、幼い顔をきゅっと歪めて、大きな瞳をうるうるとさせているツナ。そんな姿に、男達も思わず息を詰める。
「と、とにかく!悪いと思ってんなら片付けと、あと倉庫の掃除もしろよなっ!」
男子生徒の一人が、顔を真っ赤にしてどもりながら、ツナに持っていた箒を渡す。男達は、何だか自分が悪いことをしているような気分になって、全員そそくさと体育館から出ていってしまった。
残されたツナは、しんと静まり返った体育館で、一人ため息を吐いたのだった。
***
「はぁ…ついてないなぁ……」
授業で使ったボールなどを全て片付けた後、ツナは体育館の裏手にある古い倉庫へとやってきた。ここは体育祭などの行事で使う道具が置いてある所で、普段の授業や部活動では使わないのだが、たまに清掃をするらしい。
少し埃っぽい、かび臭い倉庫の中で、ツナはどこから手を付けたもんかと悩んでいた。
「とりあえず、箒で掃くだけでいっか……」
薄暗い倉庫の奥まで入って、そう呟きながら箒を握りなおした時、
「んぐぅっ!?」
突然、後ろから伸びてきた何者かの手に口を塞がれて、ツナは身体を跳ねさせた。驚いて固まった手から箒が落ち、床に転がる音が響く。
「んんんっ!?んっ、んむぅっ!」
(なになになにっ!?だれっ…!?)
軽くパニックを起こすツナの口を塞いだまま、背後にいる人物はもう片方の手で抱き付いてくる。