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□雲をつかむ
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だが、それよりも驚いたのは雲雀の言葉だった。
(う、うち!?うちってもしかして……雲雀さんの家ぇっ!?)
なぜ群れるのが嫌いな雲雀がそんなことを言ったのか、なぜ自分を家に連れていくのか分からないツナは戸惑うばかりだ。
雲雀は前を向いたままなので、彼がどんな表情をしているのかも分からない。だが、断ると恐ろしい目に遭いそうで、恐る恐る付いていくしかない。
足をもつれさせつつ後ろをちょこちょこと歩くツナを引っ張りながら、雲雀が口元を緩めていたことを、またその瞳にはどこか熱っぽいものを秘めていたことを、誰も知らない。
***
「ここだよ」
「ほぇぇ…!」
そんなこんなで連れていかれた雲雀の家は、とんでもない豪邸だった。時代劇なんかに出てきそうな大きな屋敷を、ツナはぽかんと見上げる。
雲雀は、ぱかっと口を開けたまま固まってしまったツナを面白そうに眺めた後、つかんだままの腕を再び引っ張って歩きだした。
これまただだっ広い庭を抜けて、屋敷の玄関に入る。
「靴、脱いで」
「あっ…は、はいっ」
雲雀が先に上がって、ツナも慌てて靴を脱いで家に上がろうとすると、
「うわぁっ!?」
身体がふわりと浮いて、雲雀に横抱きにされていた。いわゆる、お姫様抱っこだ。
「ひ、雲雀さんっ…!?な、何を……!」
「靴下も汚れてるでしょ。そんな足で廊下を歩くつもり?」
「めっ、滅相もないです!」
(でもっ…ひ、雲雀さんの顔が、こんなに近くに……!)
逆らうのが怖くてすぐに大人しくしたが、ツナは急に近くなった雲雀の顔に、頬を真っ赤に染めていた。間近で見る整った顔と、細身なのに自分を軽々と持ち上げる男らしさに、何だかドキドキしてしまう。
雲雀が向かったのは洗面所だった。奥に続く風呂場のドアの前まで行って、マットの上にツナを下ろす。
「ほら、早く脱いで入って」
「え……」
どうやら風呂に入って、汚れを落とせと言っているのだろうが……
(な、何で雲雀さんまで……!?)
そう、なぜか雲雀は肩にかかっていた学ランを棚に置くと、カッターシャツを腕まくりした。下も靴下を脱いで、同じくスラックスを捲り上げている。
動けないでいるツナに、準備ができたらしい雲雀は何を思ったのかにやりと笑うと、
「それとも、脱がせてほしいの?」
「へっ……」
カッターシャツの前を開いて、素早くブレザーごと脱がしてしまった。
「えええっ!?えっ!?」
「さっきも思ったけど、君って本当に細いよね。ちゃんと食べてる?」