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□雲をつかむ
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驚いて視線を動かすと、男の一人が壁にぶち当たって倒れているのが見える。

「ぎゃっ!」

次いで鈍い音と悲鳴が聞こえて、もう一人の男も地面に倒れ込んだ。何が起こったのか分からないツナは、ただ呆然とするばかりだ。

だが、ツナに挿入しようとしていた男は、前方を見て固まったまま顔を真っ青にしていた。

「ふ、風紀委い…!」

最後まで言い終わる前に、その男が後方にぶっ飛んだ。

「ぁ……!」

慌てて自由になった手で口からトランクスを吐き出し、ツナが起き上がる。下半身をわたわた隠しながら振り返ると、

「ひ、雲雀さん…!?」

そこには、並中の風紀委員長、雲雀恭弥が立っていた。

……無表情で。

ある意味、不良に襲われる以上の恐怖が沸き起こる。

「ひ…雲雀さ、ん……あの…助けてくれて、ありがとうございま」
「別に助けたわけじゃないよ。群れてたから噛み殺そうかと思っただけ」
「でででですよねー!」

ツナは真っ青になって、ものすごい勢いで乱れた衣服を直し始めた。普段からは想像もつかないような素早い身のこなしだ。尻の中が痛いとか、唾液で濡れたトランクスが気持ち悪いとかなんて全く気にならない。

「ししし失礼しましたぁーっ!」

ちんたらしてたら自分も噛み殺される!……服はまだぐちゃぐちゃだがとりあえず全部身に付けて、雲雀の横を猛ダッシュで通り抜けた。

……のだが、

「待ちなよ」
「どわぅっ!?」

通り過ぎざまに雲雀の足が伸びてきて、ツナは見事に引っ掛かりすっ転んでしまった。地面で顔面を強打し、無様にべしゃりと沈んでしまう。

「君……」
「っひぃぃっ!」

自分に近付いてくる足音に、ツナは情けない悲鳴を上げて絶望した。

(やっぱり噛み殺されるんだ群れてたし雲雀さん弱い奴嫌いだしぃぃっ!)

だが、いつまで経ってもトンファーは飛んでこない。

その代わりに、

「そんな格好で帰るつもり?」
「へ…?うわっ!」

惚けた声で聞き返そうとすると、その前に手首をつかまれて立たされた。そのまま雲雀はどこかに向かってすたすたと歩き始める。

「えっ…ひ、雲雀さん!?」

腕をつかまれたままのツナも、当然後に続くことになる。

「そんな格好じゃ風紀が乱れる。うちに来なよ」
「え……」

ツナの制服は土や埃で汚れ、カッターシャツは乱暴に引きちぎられたためボタンがいくつか飛んでしまっていた。髪もぐちゃぐちゃだし、確かに酷い格好である。

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