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□Cotton candy
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そして、十数分後。
「んー…んぅ……」
ツナの頬はほんのりと赤く染まり、目はとろんとして、身体は左右にゆらゆらと揺れていた。
そんな様子のツナに、獄寺は息を呑む。
「じ、十代目…?」
「ごくでらくん…チョコ、はぁ……?」
「えっ、いや…すみません、もう全部食べてしまわれたようで……」
「やだ…もっと、ほしぃ……」
「はっ!?」
いきなりべたっと胴体にくっつかれて、上目遣いで見つめられた。挙げ句に舌ったらずに強請られて、獄寺はかっちんこっちんに固まってしまう。
「おいおいツナぁ、何やってんだ?」
それに気付いた山本が、苦笑しつつ(周りには真っ黒なオーラを出しつつ)ツナを獄寺から引き離した。
頭上から覗き込まれて、ツナは潤んだ瞳で山本を見上げる。
(ッ、やべぇな、これ……)
思わぬ攻撃に、山本は表面上は余裕の笑みを浮かべながらも、欲望を抑えるのに必死だった。
「沢田の奴はどうしてしまったのだ?」
「どうやら、ボンボンの食い過ぎで酔っ払っちまったみてーだな」
「な、チョコレートで……?」
不思議そうに尋ねる了平に一部始終を見ていたリボーンが返せば、周りの人間が驚いたように目を見開く。
それもそうだ。いくらお酒が入っているとは言え、まさかチョコレートでここまで酔う人間がいるとは。
ツナはまだ中学生だが、それにしてもアルコールに弱すぎる体質だったようだ。
しかも、
「んぅぅ…甘いの、もっとほしい……」
「「「ッ!!!」」」
頬を上気させて、とろけた表情で強請る姿は、いつもの何倍もの色気を放っていて、その場にいた男(ランボ、フゥ太除く)の欲情を直撃した。
「はひっ?ツナさんヘロヘロです!」
「本当!ツナ君、大丈夫…?」
京子やハルが心配そうに覗き込むも、ツナは「おやつぅ…」とうにゃうにゃ呟くだけだ。
「ただの酔っ払いだから心配いらねーぞ。少し休めばすぐに治るだろ」
いち早く立ち直ったリボーンが、咳払いをしながら言う。誤魔化すように、ボルサリーノを直しながら。
「おいお前ら。誰でも良いから、ツナをベッドへ寝かせてこい」
「っ、おう!だったら俺が行くぜ」
その言葉に一番に反応した山本が、ツナをひょいと横抱きにして立ち上がった。
「お、俺も極限に沢田が心配だ!一緒に行くぞ!」
了平もハッとして、山本の後に続いてリビングを出る。
ドアから出た所で、
(チッ、俺一人で良いのに……)
(抜け駆けは許さんぞ!)
と二人の間に火花が散っていたことは、誰も知らない。