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□Hypocrites
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炎真は唾液の付いた自分の唇をぺろりと舐めて、ツナに視線を合わせる。

「おはよう、ツナ君」
「はぁっ、はぁっ…えんま、くん……?」

頭上から冷たい、だが滾るような瞳で見下ろしてくる炎真を、ツナは息も絶え絶えになりながらぼんやりと見上げた。呼吸をするのが精一杯で、自分の身に何が起こっているのか分からないのだろう。

「お、れ…いったい……?」
「ツナちゃん、何にも覚えてないの〜?」
「っ、ぇ……」

突然背後から声を掛けられて、ツナの肩がびくっと跳ねる。そこでようやく、自分が誰かにもたれかかっていることに気付いたのか、慌てて身体を起こして後ろを振り返った。

「ぁ…加藤、ジュリー…さん……?」
「おっ、さっき初めて会ったばっかなのに、名前覚えてくれてたんだ?うっれしぃ〜」
「さっき…?ぁ……!」

意識を失う前のことを思い出したのか、ツナがハッとして表情を強張らせる。

(そう、だ…たしか、エンマ達が……!)

頭の中に仲間達が攻撃される映像がよみがえって、サッと青ざめる。そして、ここがどこか知らない場所で、自分がなぜかシャツと下着しか身に付けていないことに愕然とした。

「ここ…どこ…!?みんな…みんなはっ……!」
「ボンゴレの奴らなら、今ごろツナちゃんを必死になって探してるんじゃないかなぁ?」
「な、なんで…おれ…!みんなっ…!」

分からないことが多すぎて、ツナは混乱していた。仲間は酷い怪我をして、皆無事なのだろうか、と不安で血の気が引いていく。

すると、ずっと黙っていた炎真がツナの顎を強くつかんだ。

「っ、ぁ…!」
「ツナ君は、自分の心配をした方が良いよ」
「いたっ…!」
「これから、君に酷いことをするんだから」

鋭い瞳に射ぬかれて、ツナの表情に怯えが混じる。思わず身体を退こうとしたら、後ろにいたジュリーにすっぽりと抱き込まれてしまう。

「ゃ…なに、を…!」
「大丈夫だって、気持ち良くて楽しいことだから〜。ツナちゃんは何もしないで良いんだぜぇ?」
「や、だ…!」

何をされるか分からない恐怖に震えるツナを、炎真は鼻で笑って、グッと顔を近付けた。

「気持ち良いけど、恥ずかしくて、すごく屈辱的なことだよ」
「ゃっ…!」
「でも当然だよね?悪いのはツナ君なんだから」
「っ…!」

炎真の激しい憎しみのこもった瞳に、ツナは気圧されるように身体を竦ませる。

炎真はボンゴレに、ツナに復讐するつもりなのだ。
シモンの領地に一人さらわれて、武器も何もないツナに抵抗する力はない。逃げることもできないだろう。

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