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□Hypocrites
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それが、本当は怒りや恨みなんかではなく、炎真がツナに対して抱いている激しい感情は、もっと別のものだ、と……一人気付いているジュリーは、内心ほくそ笑む。何て他愛ない、と。
(……そうだ。だから、怒りや憎しみのせいにしてしまえば良い)
自分の本当の気持ちに気付かないで……いや、気付かない振りをして、自分の欲望も、どろどろとした暗い感情も、全部ぶつけてしまえば良い……すでにギラギラと欲に塗れた目でツナを見ている炎真に、ジュリーはにやりと笑うのを抑えられない。
だが、ツナのことしか見えていない炎真はそんなジュリーには気付かない。そしてツナに近付くと、その頬を両手で包んで上に向けさせた。
眠っていて体温が高いのか、ツナの頬はほんのりピンク色になっている。近くで見る寝顔は、さらに艶っぽかった。
薄ら開いて小さな吐息を漏らす唇に、炎真は堪らず吸い付いた。
ツナを間近で見て、急にその唇を貪りたくなったのだ。
「ん、ん……」
角度を変えて、何度も啄むようなキスを繰り返す。キスをするのは初めてだ。しかも男に。
だが、そんなことは気にならないくらいツナの唇は柔らかくて、気持ちが良かった。
「……ずいぶん初々しいキスだな〜。大人のキスもしてあげたら?」
頭上でからかってくるジュリーに、炎真は不思議そうに目線だけを上に向ける。
「舌とか入れてあげんの。やってみろよ」
その言葉に一瞬目を見開くも、開かれた唇に誘われるように、炎真はツナの口の中に舌をねじ込んだ。
キスの仕方など分からないが、夢中で口内を掻き回す。それほどツナの口の中は唇と同じくらい柔らかくて、何だか甘い味がした。
「んんっ、ん…ふ、ぁ……」
内壁を舌でなぞり、舌を絡めて弄ぶ。
口内を激しく犯されて、さすがのツナも目を覚ましたようだ。ゆっくりと瞼が持ち上がり、目の前いっぱいに広がる炎真の顔を認めると、心底驚愕したように目を見張る。
「んぅっ…!?ふぁっ…ん、んんーっ!」
ツナが目を覚ましても、炎真はキスを止めようとはしない。押し返そうとしても、後ろからジュリーが抱き込むように捕えているので、身動きがとれない。
息が上手くできずに、ツナの口からは苦しそうな、だがそれだけではないような、鼻に掛かった息が漏れる。頬が赤く色付いて、瞳にじんわりと涙が滲む。
その可愛らしい声と姿に、炎真はさらに勢い付く。
ようやく解放された頃には、ツナは肩で大きく息をして、ぐったりとジュリーに身体を預けていた。