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□Hypocrites
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周りをコンクリートの壁で囲まれた、どこか殺風景な部屋の中。少し広めのその空間には、出入口であるドアが一つと、窓が一つ。窓の向こうには一面の海が広がっているが、ここがどこなのかは分からない。

部屋の中には、中央奥に少し大きめのベッドが一つ置いてあるだけで、他に家具などは一つもなく、もの寂しい感じがする。

そして、そのたった一つのベッドの上には、一人の少年が横たわっていた。
柔らかな薄茶色の髪に、小柄でほっそりとした身体付き。意識はないらしく瞳は閉じられていて、静かに眠る表情はとてもあどけない。
華奢な身体にはカッターシャツと下着しか身に付けておらず、長めのシャツの裾からは、細く白い足が伸びていた。

「………」

そんな少年……沢田綱吉に、一つの影が近付いた。
無精髭を生やし、黒縁眼鏡に帽子を身に付けた、飄々とした雰囲気の男。

男……加藤ジュリーは、ベッドに手を付いてツナの寝顔を覗き込むと、その頬を指で突いた。

「ムフフ、頬っぺたぷにぷに〜」

感触を楽しむように、ふっくらとした頬をつんつんと突く。
すると、ツナがくすぐったそうに身じろぎをした。

「ん……」

小さく吐息を漏らして、指から逃れるようにもぞもぞと動く。その可愛らしくも、妙に色気のある姿に、ジュリーの双眸が怪しく光った。

「可愛いなぁツナちゃん……俺、もう我慢できねぇ」

ニヤリと笑って唇をぺろりと舐めると、ジュリーは無防備に眠るツナに覆いかぶさった。

だが、シャツに手を掛けボタンを外そうとした時、

「……何、してるの」

ドアが静かに開く音がして、ジュリーの背中に声が掛けられた。
その声音は無感情に聞こえるが、いつもより僅かに低く、怒気を孕んでいるのが分かる。

それにジュリーが内心苦笑しながら振り返ると、ドアの前にはツナと同い年くらいの、赤毛の少年が立っていた。髪と同じ赤い瞳はじっとりと睨み付けるような、仄暗い印象を受ける。

「炎真、ちょうど良いところに来たなぁ。お前も混ざるか?」

おどけたように言うジュリーに、炎真と呼ばれた少年は怪訝そうに眉を潜めた。

「混ざるって、何に?何する気?」
「何って、そりゃ決まってんでしょー?ツナちゃんを可愛がってあげるんだよ〜」
「かわい、がる?」
「そっ。そのためにわざわざ連れてきたんだからさぁ」

ボンゴレボスの継承式を襲撃した炎真達シモンファミリー。ボンゴレリングを破壊して立ち去る際、シモンの一員であるジュリーは、気絶したツナを攫って、このアジトまで連れてきたのだった。

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