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□I want!
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「はぁっ、はぁっ…!」
周囲をコンクリートの壁に囲まれた、だだっ広い空間。
その丁度真ん中で、ツナはがくりと片膝を着いた。
額にオレンジ色の炎を灯し、両手にグローブをはめた超死ぬ気モード。だが、いつも凛とした表情は今は苦しそうに歪められて、肩で大きく息をしている。
ツナの肩には、同じくオレンジ色の炎を纏った小さなライオンのような生き物が、やはり苦しげに息を吐いてちょこんと乗っていた。
今にも崩れ落ちそうになりながらも、一人と一匹は自分達の前方を強く見据えている。
「……よし、今日はこれくらいで良いだろ。もうすぐ夕飯の時間だ」
見据えた先、少し離れた所に立っていた黒のスーツにボルサリーノ姿の赤ん坊――リボーンは、ニッと笑って煙をふかしている愛銃にフッと息を吹き掛けた。
ミルフィオーレとのチョイスバトルまであと数日。ツナとその守護者達は、それぞれ別れて修行に勤しんでいた。
ツナもようやくボンゴレ匣を開けることができ、ナッツと名付けたライオンの匣兵器と訓練をしている。
今日は、何を思ったのか修行に付き合ってやると言ってきたツナの家庭教師ことリボーンに、嫌というほど絞られていたのだ。
リボーンの言葉に、ツナは息を吐いて肩の力を抜いた。目を閉じると額の炎が消えて、次に目を開いた時にはくりっとした大きな瞳が現れる。
「はぁぁぁー……」
通常モードに戻った途端、ツナはその場にへたり込んだ。
最強のヒットマンと言われるだけあって、やはりリボーンはめちゃくちゃ強い。体力の限界まで追い詰められたのに、彼は息一つ乱れていない。
「ナッツお疲れ。良く頑張ったな」
リボーンがさっさとトレーニングルームから出ていった後、ツナは肩にいたナッツを抱き上げて、労いの言葉を掛けた。ナッツは疲れた様子を見せながらも、嬉しそうに尻尾を振っている。
もう残った炎が少ないのだろう。身に纏ったそれは弱々しくなっていた。
「もう炎も切れちゃうし、今日は戻って良いよ」
ツナがナッツを休ませようと、ポケットから匣を取り出そうとする。
だが、
「ガゥッ!」
「わぷっ!?」
突然ナッツが短く吠えて、ツナの顔に飛び付いてきた。咄嗟のことに反応できず、後ろにひっくり返ってしまう。
「ちょっ、ナッツ!急にどうし……ひゃっ!」
ナッツを退かそうとして、ツナの口から短い悲鳴が上がった。ナッツがツナに張り付いたまま、顔をペロペロと舐め始めたのだ。