Main

□Innocent
2ページ/8ページ



幸い並盛高校は校風も良く、授業でたまに……いや、頻繁にドジをしても、生徒達からはからかわれる程度で済んだ。逆にツナの人柄や性格から(あるいは容姿から)、親しみを込めて「ツナ先生」とか「ツナちゃん」とか呼ばれていた。


そうしている間に数ヶ月が経ち、ほんの少し学校生活に慣れてきた頃。


「沢田先生」

午前中の最後の授業が終わって、教室を出ようとしたツナは後ろから誰かに呼び止められた。
振り返ると、そこにはモデルのような長身に整った容姿をした、一人の男子生徒が立っている。彼はこの学年の首席で、教師に対する接し方も礼儀正しい優等生だった。

ツナは、どうしたんだろう、と不思議そうにその生徒を見上げた。彼の方が身長が高いので、自然と見上げる体勢になってしまうのだ。

「えっと…どうしたの?」
「実は、先生に相談したいことがあって……今日の放課後、少しお時間を頂けないでしょうか?」
「え、俺…じゃない、先生に?」
「はい」

なぜ担任ではない自分に、それも見るからに頼りなさそうな自分に相談したいのか不思議だったが、見下ろしてくる生徒の表情は真剣そのもので。

「うん、分かった」

完璧かと思われる彼にも、やはり悩みはあるのだろうと、ツナは笑顔で了承した。ドジをしてばかりの自分を頼ってくれて、嬉しく思ったからでもある。

誰にも聞かれたくないから、とあまり人の来ない理科準備室が良い、と言う生徒に、ツナは頷いて教室を出た。


その男子生徒が、ツナが出ていった後、仄暗く笑っていたのも知らないで。


そして、あっという間に迎えた放課後。

ツナが準備室へ向かうと、そこにはすでに先ほどの男子生徒が待っていた。

「早かったんだね。さ、入って」

鍵を開けてやると、生徒は薄暗い準備室へと入っていった。やはり真剣な表情をして、何も言わずに。

そんなに深刻な悩みなのだろうか、とツナも少し身構えながら部屋に入る。

そして電気を点けようとして、ドアの隣にあるスイッチに手を伸ばそうと、生徒に背を向けた瞬間だった。

「んぅっ!?」

いきなり背後から抱き締められて、方手で口を塞がれた。何が起こったのか分からず固まる身体を、部屋の奥まで引きずるように連れていかれる。

そして、気が付けば硬い床に押し倒されて、その男にのしかかられていた。

「っ、ぇ…ぇっ……?」

まだ状況が理解できず、ただ無意識に捩ろうとする身体を押さえ付けられる。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ