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□One prisoner
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(っ…きもち、わるい……!)
夕方。仕事帰りのサラリーマンや大学生で満員の電車の中、ツナは車両の隅に追いやられ心の中でそう叫んだ。身動きが取れず、人がいっぱいで息苦しいだけならまだ良い。
問題なのは、
「っ……」
列車に乗り込んでしばらく経った後、臀部に突然走った違和感。やわやわと間探るように動くそれは、偶然鞄などが当たっているわけではなかった。
大きくてごつごつした、明らかに大人の男の手で。
ツナは、痴漢に遭っていたのだ。
(俺、女の子じゃないのに……!)
男子の制服を着ているから、間違えることはあり得ない。つまり、相手はツナが男だと分かって、そういう行為をしているのだ。
やがて、揉み込むように動いていた手が、双丘の割れ目をなぞるように触れてくる。ぞくぞくとした、嫌悪感とも何とも言えない感覚に身体が震えた。
自分の背後のどこからか伸ばされる手。気持ち悪さと恐怖に、ツナは動けず俯いて耐えるしかない。
すると、
「っ……!」
ずっと小さな双丘を撫で回していた手が前に伸ばされ、ツナは驚いて目を見開いた。ズボン越しにいきなりそれを触れられて、身体が強ばったのだ。
「ゃっ……!」
そこで途端に、背後にべったりと密着してくる気配を感じ、耳元に荒い息がかかって、恐怖心が一気に跳ね上がる。
(や、やだっ……!)
急に冷静に考えられなくなって、ツナは誰かに助けを求めようと決心した。
「ぇっ……?」
だが、伸ばしかけた手は横から伸びてきた手に捕まれてしまう。驚いてそちらを見れば、大学生くらいの男がツナの手をがっしりとつかみ、にやにやといやらしい笑みを浮かべていた。
「すっかり怯えちゃって、可愛いな」
「っ……!」
そう言いながら、男はもう片方の手で上半身を撫で回してきた。
(な、なん…で……)
背後とは別の人物にも身体を触れられて、頭の中が一瞬で真っ白になってしまう。
さらに、
「本当に可愛いね」
「ああ、今日は当たりだな」
それだけではなかった。手をつかむ男とは反対側にいるサラリーマンも、ツナの目の前にいる男も……いや、ツナの周りにいる複数の男達が、全員ツナをいやらしい、熱っぽい目で見ていたのだ。
(な、に…なに、これ……!)
男達は、いわゆる集団で痴漢行為を働く者達だった。ネット上で知り合い、日時を指定して集まっては、狙った獲物を囲んで行為に及ぶのだ。