Main

□センパイ受難曲!
3ページ/12ページ



おまけに沢田は風紀の雲雀にも気に入られてるみたいで、トラブルを起こした俺は会うだけでトンファーが飛んでくるし……

さらには変な髪型と笑い方をした妙な男が、良く沢田をストーカーをしてるし……しかもその男と目が合うと、その晩はなぜか夢見が悪くなる……

「はぁぁぁぁ……」

きっとアイツらも沢田のことが好きで、アイツらにとって俺は邪魔者でしかないということだ。

どうやら俺は、とんでもない相手に恋をしてしまったらしい。

巨大な壁を前に打ち拉がれていると、

「どうしたのだ持田!辛気臭い顔をして、ため息なんぞ吐きおって!」

どがどかと大きな足音を立てて、怒鳴るように一人の男が近付いてきた。見るからに熱いオーラをまとったそいつは、同じクラスの笹川了平だ。

「頼むから俺に構ってくれるな……」
「何だ何だ!そんな気分が冴えない時こそ、極限ボクシングに限るぞ!」
「あのなぁ……」

俺は笹川と違って繊細なんだよ……と思いつつ、いつもは暑苦しいだけのコイツが、今は少し羨ましく感じる。
俺も、コイツみたいに真っ直ぐに生きられれば……。

「小難しく考えても仕方がない!自分の気持ちを、胸に秘めている熱い想いを思い切りぶつけるのが一番だ!」
「………」

自分の気持ちを…俺の想いを、沢田に……。

「極限ー!」と闘志を燃やす笹川のことはもう忘れて、俺はただその言葉だけがずっと頭に鳴り響いていた。


***


「持田主将、お疲れ様です!」
「おう」

放課後。部活で打ち込みの練習を終えた俺は、面を外すと一息吐いた。

剣道をしている時はそれに集中できるが、それ以外の時に浮かぶのは沢田のことばかりだ。本当に沢田のことが好きで好きで仕方がないらしい。

だが決めた。笹川の言葉に感化された訳じゃないけど、もう悩むのは止めだ。

俺はもう一度、沢田に告白しに行く。

以前酷いことをした俺だ。きっと嫌われているだろう。男が好きなんて、と気持ち悪がられるかもしれない。

だが、それでも構わない。思い切り俺の想いをぶつけて、砕ければ良いじゃないか。

「……ん?」

そこでふと違和感を感じて、俺は剣道場の入り口へと目を向けた。誰かに見られてるような気がしたんだが、入り口には誰の姿もない。

(またか……)

一年くらい前から、良くどこからか視線を感じるんだよな。部活してる時が一番多いけど、たまにそれ以外でも……。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ