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□センパイ受難曲!
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休み時間。騒がしい教室で、これまでの経歴を思い出してみる。可愛い女の子を見ると、すぐに声を掛けていた自分を。

(そう考えたら、俺ってかなり最低な奴だな。けど……)

そのことを気付かせてくれたのも、実は沢田だったりする。


一年くらい前、俺はひょんなことから沢田に勝負を持ち掛けて、卑怯な手でぶちのめそうとしていた。今から思えば考えられないことだけど。

だが、その時沢田に……その、まぁいろいろあって、完全に負かされてしまった。
始めは沢田を恨んだ。自業自得だけどめちゃくちゃ恥かいたし、次の日から周りの奴らには馬鹿にされたり蔑まれたりしたし。それに……ま、まぁアノことは良い。とにかく、何とか仕返ししてやろうと思って、アイツの様子をうかがうようになったんだ。

だが、アイツの周りには手強い友人やら取り巻きやらがたくさんいて、手を出せない日々が続いた。

(懐かしい思い出だ……)

苛々する毎日。沢田が他の奴らと楽しくしているのを見ると、沢田が他の奴らに笑いかけるのを見れば見るほど、胸のもやもやは溜まっていくばかり。

そこでようやく、自分の心の変化に気が付いた。沢田への本当の気持ちも、なぜアイツをしつこく追い求めるのかも。

沢田の側にいたい。沢田に笑いかけてもらいたい……俺は沢田に完全に恋をした。


……だとすれば、俺がすることは……





………告白。

(けどなぁ……)

机に頬杖を付いて、深いため息を吐く。

そりゃ俺だって、いつもただ遠くから見ていただけじゃない。何度か勇気を振り絞って、告白しに行った時もある。

(なのに、ことごとく失敗に終わってるのは……あのめちゃくちゃな取り巻き達のせいだ!)

沢田の周りには四六時中誰かが引っ付いていて、なかなか一人のところを捕まえることができない。おまけに俺は取り巻き連中から“沢田を貶めようとした下衆な人間”と思われていて……。

(あああ思い出しただけで寒気が……!)

これまで死ぬほど酷い目に遭ったことが鮮明に蘇ってきて、俺はぶるぶると身体を震わせた。

どんな目に遭ったなんて言いたくもないが……

沢田にストーカーのごとく貼り付いている銀髪の不良は、俺の姿を見るだけでダイナマイトを投げ付けてきやがるし……

見た目はニコニコしてる野球野郎は、俺が沢田に近付こうもんなら竹刀片手に笑顔で脅してくるし……ていうかあの竹刀、たまに日本刀に見えるんだけど気のせいか……?

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