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□女王様と浮雲と(後編)
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おまけに「もし言い付けを守れなかったら、昨日よりもキツいお仕置きをするからな」と怖い笑顔で脅されて、恐怖で顔が真っ青になる。
ツナが必死にガクガクと頷くのを認めると、ジョットはようやく表情を緩めて、
「良い子だ。帰ってきたら、またたっぷり可愛がってやろう」
「っ……!」
臀部をするりと意味ありげに撫でるので、びくっと大袈裟なくらい反応してしまう。
そんなツナを見て微笑むと、ジョットはマントを翻したのだった。
「………」
一気に静かになった広い部屋に、一人ぽつんと残される。
(そっか…今日はジョットいないんだ……)
ツナは何だか寂しいような、何とも言えない気持ちになったが、
「……ふぁ」
明け方近くまで寝かせてもらえなかったので、凄まじい眠気に襲われて……布団の中に潜り込むと、ツナはまた深い眠りへ落ちていったのだった。
招かざる客が、屋敷へ近付いているのも知らないで。
***
「んー……」
それからどれくらい眠っていたのだろうか。
ツナが目を覚ますと、太陽はかなり高い位置にあって、もうお昼頃であることが分かった。
むくりと起き上がると、途端にお腹がきゅぅきゅうと鳴りだす。ゆっくりとベッドから這い出て、テーブルの上に用意されていたパニーニをもそもそと食べた。
今の今までずっとジョットが側にいて、着替えやら食事やら入浴まで甲斐甲斐しく世話をされていたので、一人だけという状況にものすごく違和感がある。
さてこれからどうしようか、と考えていると、
コンコン……
「え……?」
突然、重厚な部屋のドアがノックされる音がして、ツナは目を丸くした。
ジョットが帰ってきたのだろうか、とドアに近付いて、鍵を開けようとしてはたと気付く。
彼は夕方まで帰らないと言っていたし、もしジョットなら普通に開けて入ってくるだろう。
(だ、誰だろう……?)
途端に甦ってくるのは、ジョットの「絶対に扉を開けるな」と「誰にも姿を見せるな」という言葉……
……ではなく、
「言い付けを守れなかったらお仕置き」
という言葉だった。
(た、たたた大変だぁぁっ……!)
一気に血の気が引いて、ツナは慌てて部屋の奥にあるベッドへ潜り込んだ。誰か知らない人間に攫われる恐怖よりも、ジョットのお仕置きにガタガタと震えて。
(誰だか分かんないけど、早くどっか行ってぇぇっ……!)
必死に心の中で叫んでいると、しばらく鳴り続いていたノックの音が止んだ。