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□女王様と浮雲と(後編)
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朝。広い部屋の奥にある、バルコニーへと続く大きな窓からは、穏やかな日の光が差し込んでいた。それが少し開いているのか、爽やかな風がレースのカーテンを揺らし、外では微かに鳥のさえずりも聞こえてくる。
そんな気持ちの良い朝の風景の中、天蓋付きの豪華なベッドの上でツナはまどろんでいた。肌触りの良いシーツとふわふわの布団に包まれて、何とも言えない心地よさに幸せそうに微笑みながら。
そこへ、
「……シ、……ツナヨシ」
「ん、ぅ……」
耳元で甘い声で囁かれ、優しく肩を揺すられて、夢と現つの間を漂っていた意識がふわりと浮上する。
薄らと目を開ければ、そこには太陽の光よりもキラキラとした風貌の男がいた。
「ん…ジ、ォ……?」
「おはよう、ツナヨシ」
「ん、む……」
蕩けるような笑顔で、唇にちゅ、とキスされる。そのままジョットはツナの頬や瞼、おでこにも優しくキスを降らせていった。
「ツナヨシ、まだ起きなくても良いから聞いてくれ」
「ん、ん……?」
されるがままになっていると、おはようのキスを終えたジョットが両手でツナの頬を挟んで、その顔を覗き込んだ。
「今日、俺は用事があってどうしても出掛けないといけない」
「ぇ……」
「全くGの奴、ツナヨシとの時間を邪魔するとは無粋な真似をする」
端正な顔を不機嫌そうに歪めて、ぶつぶつと文句を言うジョットの言葉を、ツナはまだぼんやりとした頭で何とか理解しようとしていた。
あまりにもツナにべったりで、彼には蜂蜜のように甘いので忘れてしまいそうだが、ジョットはあのボンゴレの初代ボスなのである。仕事があるのは当然だろう。
良く見ると、ジョットはいつものラフな格好ではなく、きちんと正装し豪奢なマントを羽織っていた。
「……だからツナヨシ、今日は一人でお留守番をしていてほしいんだ」
「ぇ…ぇ……?」
「夕刻には戻る。それまで良い子でいるんだぞ?それと……」
まだいまいち状況が把握できていないツナに、ジョットは真剣な顔をして、
「部屋からは一歩も出てはいけないぞ。ツナヨシは可愛いからな、外なんかに出ればどこぞの野蛮な連中に攫われるか分からない。本当は一人で部屋に置いておくのも心配なんだ。俺のツナヨシに何かあったら心配で心配で……あと、誰かが部屋を訪ねてきても決して開けるなよ。声を聞かせるのももちろん駄目だ。俺以外の奴にその姿を見せるなんて考えられな…」
「むぎゅぅー……!」
マシンガンのように喋り続けぎゅうぎゅうと抱き付かれて、ツナは窒息してしまいそうだった。