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□女王様と浮雲と(前編)
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それに、彼のもつ独特の雰囲気というか、オーラというか……ジョットに見つめられると、ツナはどうしても逆らえなくなってしまうのだった。
それでも、元の時代に帰れないことはやはり少し不安で……。
(ずっとこのままだったら、どうしよう……)
バズーカは故障していたので、五分で帰れるとは思わなかったが、こう何日も何の変化も起きないなんて。
これでは、十年後の未来に飛ばされた時と同じである。
(も、もしかして…未来の時みたいに、ラスボス的な奴を倒さないと帰れないんじゃ……!)
不意に自分でも良く分からないことを考えて、次いで重要なことに気が付く。
「どうした?ツナヨシ」
神妙な顔で固まってしまったツナを、不思議そうに覗き込んでくる美麗な男。
(ラスボスって……どう考えてもこの人じゃん!)
あの巨大マフィアボンゴレファミリーの創始者であり、いろんな意味で最強の男。自分をこの部屋に監禁し、支配する男。
そう、この男を倒さなければ、平和な元の世界には帰れないのだ……と、ツナは確信した。
(よ、よーし……!)
死ぬ気でこの男を倒さなければ!……ツナはギュッと握りこぶしを作ると、ジョットをじーっと睨み付けた。
……のだが、
「………」
きゅ、と眉を寄せて、上目遣いで見上げられたら(しかもちょっと泣きそうになってる)誰がどう見ても睨んでいるようには見えないだろう。
「何だ、そんな可愛い顔をして……誘ってるのか?」
「っ……!」
逆に優しげな、太陽のような眩しい笑顔を向けられて、ツナはぷしゅーと顔から湯気を出して固まってしまった。
(あああやっぱり無理だ!白蘭みたいに殴れない!こんな綺麗な人、殴るなんてできないよー!)
ジョットの腕の中で、じたばたと身悶えてしまう。
こうして、ツナは未来に帰る可能性を自ら潰してしまうのであった。どのみち、死ぬ気丸とグローブがなければ戦えないのだが。
すると、
「ツナヨシ……」
「ぇ……」
ツナが一人で悶々としていたら、身体が一瞬ふわりと浮いて……ソファーに押し倒されていた。
驚いて見上げれば、不機嫌そうな顔をしたジョットの姿が。
「ツナヨシ、今他の男のことを考えていたな?」
「ぇっ…ぇっ……?」
「この俺がいるのに浮気とは、良い度胸だ」
目をぱちぱちと瞬かせているツナの頬を優しく撫でながら、だが麗しの支配者は凄絶に笑った。
「お仕置きをしないとな?ツナヨシ」
「へっ、ちょと待っ……ぁぁぁぁぁっ、んっ…!」
恐るべし、超直感。
***