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□Corruption
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「―――沢田」
「っ……!」
ただ名前を呼ばれただけなのに、大げさなくらいびくついてしまう。
体育の授業が終わって、それぞれ使った道具を片付けている最中だった。
ツナは背後を振り返ると、そこにいた人物を強ばった顔で見上げる。
「せん、せい……」
そこには、ツナのクラスを担当している体育教師がいた。生徒受けのする人当たりの良い笑みを浮かべているが、ツナは硬い表情をしたままだ。
男はそれを気にも止めず、他の生徒に聞こえないように、ツナの耳元に顔を近付けると、
「―――――」
「……!」
小さな声で囁かれた言葉を聞いた瞬間、ツナの表情が青ざめたのを、誰も知らなかった。
***
放課後。ツナは補習があるから、と言って獄寺や山本と別れると、再び体育館の方へと向かった。誰もいない更衣室で体操服に着替え、足を運んだのは体育館の裏手にある、普段は使われていない古い倉庫だ。
「はぁ……」
ツナの足取りは重く、その表情は沈んでいた。
何週間か前、ツナは教師である男に倉庫の中で襲われて、何度も犯されてしまった。それからというもの、何回か呼び出されては、無理やり行為を強いられているのだ。
もちろん拒絶はしたが、他の人間にばらされたくなければと脅されれば、従うしかなかった。
そして今日も、
『放課後、いつもの場所に来なさい』
先ほど言われた言葉が頭の中に響いて、ツナの全身に鉛のようにのしかかっていた。
倉庫の前に到着して、ツナは辺りを見回した。誰もいないのを確認すると、そっとドアを開ける。錆付いた音がして、古びたドアがゆっくりと開いた。
中を覗くと男はまだ来ていないようで……少しホッとして、電気をつけようと薄暗い中へ入る。
だが、
「ひっ…!」
突然背後から大きな身体に抱き締められて、ツナは小さく悲鳴を上げた。たくましい腕が絡み付き、耳元に熱い息がかかって、心臓が一気に跳ね上がる。
「はぁ、沢田……」
「っ……!」
いつの間に来たのだろうか。強引に顔を振り向かされれば、さっきまでの人当たりの良い姿はどこにもない、飢えた肉食獣のように目をぎらつかせた男がいた。
ぞくりと、恐怖で背筋に寒気が走る。
「沢田…いつ見ても可愛くていやらしくて……先生、授業中いつも勃ちそうになって大変なんだぞ……?」
「ふ……!」
そんなよこしまな気持ちで見られているなんて考えたくもない。我慢できないとばかりに身体中を撫で回してくる手に、ツナはギュッと目を閉じて耐えた。