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□鳥籠
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そこで初めて、綱吉が閉ざしていた口を開いた。あまり低くないまだ少年の声は、しかし重々しく威圧感がある。

その厳しい表情に、発せられた言葉に、骸は喉の奥で低く笑った。

「確かに、そう簡単には答えてくれなさそうだ。国を裏切るくらいなら死を選ぶような人でしょうから、貴方は」

骸は懐からナイフを取り出すと、綱吉の首筋にひたりと押しあてた。それに微動だにもせず、変わらず睨み付けてくる少年に、笑みを深くする。

「それに、僕もこの綺麗な顔に傷を付けるのは勿体ないと思ってるんですよねぇ」
「……下衆が」

手袋をはめたもう片方の手が伸びてきて、顎をくいと持ち上げられる。舐めるように見つめられ、綱吉は心底蔑むように、吐き捨てるように言った。

「ですが、我が君の命令は絶対ですから……」
「………」
「……その強気な表情が、いつまで保つか見物ですね?」

骸はそう言うやいなや、綱吉の軍服の詰襟に手を掛けると、一気に左右に引きちぎった。いくつかのボタンが弾け飛び、真っ白なカッターシャツが露になる。

尋問という名の拷問が始まる合図だった。

「さて、では我が君の一番知りたいことを教えて頂きましょうか……それは、貴方の君主の居場所です」
「………」

なおも睨んだままの綱吉に、骸は構わずに続ける。ナイフで、ほっそりとした綱吉の首筋をなぞりながら。

「ボンゴレ国王が今王都に不在で、どこかへ向かったということは分かっているのです。貴方なら、ご存知のはずでしょう?」
「……知らない」

無感情に言いながら、綱吉は内心苦々しく思っていた。

先日、ボンゴレ国王が極秘で戦地へ偵察に向かうことになり、直属の部下である特戦部隊が護衛に付いていた。
だが目的地へ向かう途中、どこから情報が漏れたのか、突然黒曜の兵に奇襲され……国王や他の部隊員を庇った綱吉が捕らえられてしまったのだ。

「知らないはずはないでしょう?仮にも隊長である貴方が。国王はどこへ向かうつもりだったのか……そして、そこで何をしようとしているのか」
「……知らないものは、知らない」

首元に当てられているナイフに微塵も怯えることなく、綱吉は淡々と答える。

幼い頃から厳しい訓練を受けてきた綱吉にとって、拷問などの苦痛に屈するつもりは毛頭なかった。
それに、綱吉にとっては自分の君主が、絶対の忠誠を誓った国王が全てだ。裏切るような真似をするくらいなら、自分で舌を噛み切るつもりだった。

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