From flowery bowers

□第5章
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で、そんな母親に呼び出されて地元に帰ってからは……やっぱり、寮にいた時と変わらずぼーっとする毎日が続いた。母親の話に付き合わされたり、こき使われたり……それが面倒だから外へ出れば、良く同年代か大学生のややこしいのにケンカを売られたり(ただ、あの学園や街でいろんなのに絡まれてたから、それに比べたら随分マシに感じるけど)。

だから自然と、自分の部屋に引きこもることが多くなった。さすがに少しは身体を動かさないと気が済まねぇから、適度に運動には出たけど……

あと、もう一つ変わったことといえば、

『あらー!なになに、一体どうしちゃったの!?』

学園でやってた庭仕事の手伝いを、家でもやるようになったこと、だろう。別に難しいことじゃなく、早朝と夕方に水を遣って、雑草を抜いたり掃除したりするだけだが。

細やかな世話はできないけど植物は嫌いじゃない両親が、適当にガーデニングを楽しむために作ったこじんまりとした庭だ。俺でもだいたいの世話はできる。

別に両親のためにやってるんじゃなくて、俺もこういうことをするのが割と好きになったのと……向こうで習慣付いてしまったから、ついって感じだ。……まぁ、他にやることもないからな。

けど、それを見た母親はかなりの驚きだったみたいだ(ある時姉に見られた時は、宇宙人でも見るかのような顔をされた)。そう言えば、学園でもいろんな奴に驚愕されたな……

『まぁ〜珍しいこともあるのね〜。数ヶ月見ないうちに、随分と…へぇ〜……』

雑草を抜く俺の傍らに立って、まじまじとその様子を見る母親。ただし、手伝ってくれる訳じゃない。
今まで家では、水やりは母親の仕事だったけど、草抜きは専ら親父の仕事だったからか……

……と、手伝いをするでもなく(むしろ邪魔してる)母親は、しばらく俺を眺めてたんだが……不意に、こんなことを言った。

『そうしてると、沢田さん家のツナちゃんを思い出すわよねぇ。あの子、本当にお花が大好きだったから』
『………』

突然アイツの名前が出てきて、一瞬動きを止めちまったのは気付いてないはずだ。母親は何の気もなしに、本当にふと思い出して言っただけだから。

けど、自分にとっては……

『そう、だな……』

ぎこちなく、そう返すしかなかった。

夏休みに入る直前に、久しぶりにアイツに連絡を入れたのを思い出す。あの店で変な雰囲気で別れてから一度も会わず、メールもしてなかったから本当に久しぶりだった。

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