From flowery bowers

□第4章
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それに、うんざりするのは気候だけじゃない。

六月の冒頭に行われた体育祭。それに向けての準備も当日も、どの生徒もやる気満々で大いに盛り上がって、めちゃくちゃ楽しんでた。

けどそれが終わると、実質夏休みまでは主だった行事もなければ祝日もない。特に一年生なんかは、入学してからかなり慣れてきたこともあって……この時期が一番かったるくてだらけるらしい。

一年A組も例に違わず、朝遅刻しそうになったり(担任にどやされるから完全に遅刻するのは稀だが)、来てもボーッとしてたりと様々だった。怖い教員(リボーンとかコロネロ先生とか)の授業の時は、無理やりピシッとしてるけど。

まぁそれも、週明けにある期末テストが終われば……あと少しで夏休みだから、すでにそわそわしてる奴もいる。

ただ、俺の場合は……それだけじゃなくて。


「ちょ、たっちゃん聞いてるっ?」
「え?あー」

午前中の授業が終わってようやくの昼休み。
クラスの奴らはほとんどが食堂で食べるから、かなり人がまばらな教室の中で……俺らいつもの四人は、一ヶ所に集まってた。まだいろいろと面倒なことがあるから、いまだに売店で買って食べてる。

鬱陶しがって一緒に食べたがらない獄寺の近くにお構いなしに集まるのも、いつものことだ。

ただ今日は、いつもと様子が違うというか……いや、違うのはチュン太だけなんだろうけど。

「悪い、ボーッとしてた」
「えぇーっ?」
「ははっ、聞いてやれよタッチー。何か面白そうな話だぜ?」
「もう、面白い話じゃなくて真剣な話!」

そう言えば、チュン太は朝から若干顔色が悪かった。俺らの知らない所で、また面倒くさいのにちょっかいかけられたのかと思ったけど……どうやら違うらしい。

「あ、あのね…図書委員会の先輩から聞いたんだけど……」

ほとんど俺らしかいないのに、チュン太は辺りを憚るみたいに声を潜め表情を歪めて、

「それがね……“出る”んだって、この学校」
「……何が?」

恐ろしい事実を伝えようと険しい顔をしてるけど、それだけじゃこっちはさっぱり分からない。何が出るんだ?

そしたら、チュン太は少し躊躇った後……呟くように言った。

「……………お化け」
「………」
「ぷっ、はははははっ!」
「ちょっと山本君!笑い事じゃないんだよ!?」

チュン太は怒ってるっていうかかなり真剣だけど、そりゃ山本が笑うのも無理ないだろ。

だってお前、お化けって……本当にそんなのがいると思ってんのか?

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