From flowery bowers

□第1章
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寮管も言っていたように、もうすぐ教室で初めてのホームルームがある。

まだ後から来た生徒で溢れ返る寮の玄関を通り抜け、校舎へと向かった。生徒専用の昇降口に貼り紙がしてあり、そこで自分達のクラスと場所を確認しなければならない。

「………」

背が高いのはこういう時に便利だ。小柄な奴らの後ろから確認して、さっさと中へ入った。上履きは今日貰えるが今はまだないから、今は来客用のスリッパで。

クラスはA。覚えやすくて良いが、普通教室の一番端にあるから少し遠いのが難点か。
仕方なく一年のフロアである四階まで上がると、一番奥の教室へと向かった。

もうすでに多くの生徒がそれぞれの教室にいて、談笑したり大人しく席に座っていたりと様々だ。

ただ、

(………)

何となく、違和感を感じるのは自分だけだろうか。

第一印象としては、お坊っちゃんばかりかと思っていたが、そこまででもない気がするということ。だいたいの雰囲気で、そこそこの家柄なのだろうという生徒がたくさんいるのは分かる。
それに自身のように、少数だが普通の市民に見える生徒ももちろんいた。

たが、それだけでなく……

(………?)

言葉では上手く言い表わせないが、少し……特殊な雰囲気が漂っている気がした。はっきりとは分からないが、ただ身に覚えは良くあるようなないような……かなり曖昧なものだが。

「………」

そんなことをぼんやり考えているうちに、一番端のAクラスに着いた。始めは出席番号順に座るので、座席表を確認するとそこへ向かう。

すでに教室にいた何人かが、こちらを見てすぐに慌てたように視線を戻した。

長身の上に昔から目付きが鋭いため、良く上級生や素行の悪い生徒に絡まれていた。その他の同級生には怯えられることも多かったし、こういうのは慣れている。

気にせずに、自分の座席に座った。運良く一番後ろだったため、寝るにはちょうど良いかもしれない。

集合時間まで後少し。それまでぼうっとしようかと、足を伸ばそうとしたところで、

「あ、あの……席、隣だね…?初めまして…」

すぐ横から、遠慮がちに声をかけられた。見れば、右隣の席に座っていた小柄な生徒がこちらを見ている。
緊張しているのか、控えめな笑顔は固かった。

「……ああ、よろしく」

目付きが悪い上に無愛想だと良く言われるが、目元を緩めて返せばソイツはやっと安心したように笑った。

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