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□オモテウラ
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イタリアの巨大マフィア、ボンゴレファミリーの日常は、かつてないほど穏やかに流れていた。

日本から来た青年、沢田綱吉がボンゴレ十代目ボスに就任して、早数年。

幼い頃から何をやってもダメダメだった綱吉……ツナは(それは今もあまり変わらないが)、信頼できる有能な仲間達の助けにより、何とかボスの勤めを果たしていた。

歴史も古く格式の高い、強大な力をもつマフィアのボスとなったのが、小さな島国出身の若い男。ただでさえ幼く頼りなく見られる容姿に加えて、性格はマフィアとは思えないほどの平和主義者。

彼がドンボンゴレを受け継ぐと決まった時、いや継承式の瞬間でさえも、周囲が不安や不満、疑問、反感を抱いたのは不思議ではなかった。歴代のボスとはあまりにもかけ離れた姿と気質に、血統さえも疑われたほどだ。

だが、継承式の日を境に、ファミリーの意識は徐々に変わっていく。頼りなさげだが真っ直ぐな、それでいて有事には誰よりも強く、何よりも仲間を大切にする若きボスに……ある者は信頼を、またある者は敬意を抱くようになったのである。

それからというもの、確執のあったボンゴレは再び一つとなって動き始めた。どこの誰かも分からなかった、沢田綱吉をボスと認めて。

また、ツナはファミリーの人間だけでなく、領地の住民など一般市民も大切にした。いや、ある意味彼は、そういう者達の身の安全と平穏を守るためだけにボスをしている、と言っても間違いではなかった。

街が平和であるか、常にそればかりを気にかけているのだ。敵対するマフィアが領地を脅かし、住民に被害が出ようものなら、徹底的に制裁を与えた。

今では不穏な芽があれば、危害を加えられる前に摘むほどの徹底ぶりである。

そのためボンゴレファミリーは、いやボンゴレ十代目は、一般市民からの信頼も非常に厚かった。加えて、彼は孤児院の設立や施設の援助も積極的に自ら赴いて行うため、子どもからも愛されていた。

敵対するマフィアも、穏健派だが歴代最強クラスのボンゴレファミリーに、下手に手出しすることはできなかった。そのため、マフィア間の抗争も極稀に起こる程度になっている。

こうして、恐怖や畏敬の念を抱かれていたボンゴレファミリーは、日々の安寧を愛する、また住民から信頼され愛される組織として確立されようとしていた。

まるで、かつて初代ボンゴレが街を守るために創り上げた自警団の、本来の姿に戻りつつあるかのように。

全てが、まさに順風満帆であった。


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