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□気になる彼の二面性
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(それ、いつものことだと思いますけど……!)
思わず心の中でそう突っ込んでしまう。
このディーノという男、格好よくて誰からも慕われていて、完璧な人間のように見えるのだが……実はかなりのおっちょこちょいだったりする。今のように段差を踏み外したり、何もない所で転けたり物をひっくり返したりと、なかなかのドジっぷりなのだ。
まぁ、見た目とは違うそんな意外なところが良い、と町の女性陣は思っているようだが。
(これが『ギャップ萌え』ってやつなのかな?)
最近、人間の若者たちが使っていた言葉を覚えたツナは、そんなことを思った。彼も始めはビックリしたが、今ではディーノのおっちょこちょいぶりは慣れつつある。
そう、ツナは少し前からこの教会に通っていた。リボーンやザンザスに見つからないように、こっそりと。
その目的は……ディーノに会うためだ。
何故なら、
「ディーノさん、手を……」
「ああ……サンキューな、ツナ」
「っ、いえ……」
(はぁ、今日も美味しそう……)
ディーノの手を握って引っ張り上げる時、より互いの距離が近くなることで強く感じる芳醇な香りに、ツナは頬を染めた。堪らなくなるような匂いは、ディーノのものだ。
ほんの一週間ほど前のことである。たまたま獲物を探して訪れたこの町で、ディーノを見かけたのは。
一目見て、その香りを嗅いで、すぐにこの男が欲しくなった。
超絶イケメンで、見た目も中身も格好よくて、極上の生気を持つ人間。これほどの獲物はなかなか出会えるものではないだろう。
……ただし、男であるが。
(いや、もうそんなことどうでもいい)
自分がサキュバスで、男なのに男を欲してしまう悪魔だと分かって少なからずショックを受けたが、認めるしかなかった。それよりも、リボーンやザンザスではない別の極上の餌を得られれば、悪魔としてのプライドを取り戻すことができるのではと思ったのだ。
「じゃあ、ゆっくりしていけよ」
「は、はいっ」
ただ一つ惜しむべくは、ディーノが本当にイケメンで、そして教会の神父であるということだった。何で狙った獲物がどいつもこいつも神父なんだ、と突っ込みたくなる。
しかしもっと厄介なのは、ディーノが人気者過ぎて、なかなか二人きりになれないことだ。
彼の周りには常に人がいて、こっそり襲おうにもほとんど隙がない。こうしている間にも、教会には着々と礼拝に参加する町の住人(ほとんど女性)がやってくるし、日中も多くの人間が入れ替わり立ち替わり相談に訪れるのだ。