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□夜半の月の下で
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そう言うなり、手に持っていた紙袋からドーン!という感じで……酒瓶を取り出したのだった。雲雀の好きな銘柄の日本酒、とても高いやつである。

突然のことに、雲雀も怪訝な顔をしたが……少しだけ興味をもったようだ。

「ふぅん……でも君、お酒あんまり強くないでしょ」
「それは大丈夫です!いや、大丈夫じゃないですけど……自分用も、ちゃんと持ってきてますから!」

次いで、同じ紙袋から出てきたのは小さいサイズの瓶だ。飲みやすそうな、度数が低くて甘い果実酒。
どうやらツナは、始めから雲雀と酒盛りをする気満々だったらしい。

「恭さん、失礼します」

そこへ、まるでタイミングを見計らったかのように部屋の襖が開き、雲雀の一番の部下である草壁が酒盛りセット(座卓の上にお猪口やグラス、肴などがちゃんと用意されたもの)を滑り入れてきた。もしかしなくとも、ツナが事前に連絡をしてお願いしていたのだろう。

何と用意周到なことか。そこまでして、ツナが雲雀と酒を酌み交わしたいのは、

「その…十年前の俺達がここへ来て、無事に平和になって……今さらですけど、お祝いをしたいなぁ、なんて」

言葉を選びながら、少し照れたように言うツナ。それに対して、雲雀はしばらく意味を考えた後、

「……あぁ、そんなこともあったっけ」
「いやありましたよ!」

そんな、いまいち噛み合わない会話から、奇妙な祝賀会……二人だけの小さな宴会がスタートしたのだった。


***


十年前のツナ達がこの時代へ来て……というのは、関係した人間ならば誰もが記憶に新しいだろう(雲雀を除いて)。ミルフィオーレファミリーによってボンゴレが大きな打撃を受け、それどころか世界滅亡の危機に陥って……過去の自分達によって、その危機は何とか回避された。

だがそれは、こちらが意図していたこともあって、ツナは仲間や世界を救うため様々なことに奔走していたのだ。その時に助けてもらった仲間の一人が、この雲雀だった。

もちろん、多くの仲間や過去の自分達にも助けられ救われたのだが……何よりも彼の、雲雀の支えがなければ叶わなかっただろう。それほど彼の存在は大きく、無事に問題が解決した時はすぐにお礼を言いたいと、ツナはずっと思っていた。

ただ、事件の後処理やツナが不在だった間に溜まった仕事が大量にあり、それらを早急に何とかするため日々を追われることになってしまったのだ。

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