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□Which is which?
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そしてここしばらく、ツナはまともな食事ができていない。一度ちゃんと力を補充できれば、一週間くらいどうということはないのだが……実は、かれこれ数週間はまともな食事にありつけていないのだ。

「今度こそ、失敗しないようにしないと……」

というのも、彼は悪魔にしては少々、いやかなりドジでダメダメというか……好みの人間を見つけても、何やかんやでバレて逃げられたり退治されそうになったりするのだ。一度失敗すれば警戒されるし、下手すれば悪魔払い的な人間にも狙われるから同じ街にはいられない。

今向かっているのは、近くにある町から少し離れた、森の奥深くにあるという教会だ。そこに、若くてすごく美人な司祭がいるという噂を聞いたのだ。

ちなみに、ツナの好みというか、一番美味しいと思える生気の人間は……可愛らしくて控えめな、優しい女の子だったりするのだが。

けれど、ここまで空腹だとそんなことは構っていられない。少しでも良いから人間の、若い女の生気を吸わないと駄目なのだ。

失敗は絶対に許されない。人を襲うための魔術と言っても、これまたツナはせいぜい人間の少年に変身したり、少し眠らせたりすることしかできないのだ。
しかも、力の強い人間には効かないという……かなり致命的である。

ただ、その人里離れた教会に住む美人な司祭とやらは、たった一人で暮らしているらしい。つまり、周りに邪魔者がいない分……多少ヘマをしても、逃げられたり助けを求められたりできないのではないかと、そういう魂胆である。

「……あっ!」

しばらくすると、木々の向こうにようやくその教会らしい建物が見えてきた。さすがに大きなものではないものの、しっかりとした礼拝堂だ。

(まだ、お祈りの時間かな……?)

木々の途切れ目まで来て、陰からこっそりと様子をうかがう。微かだが、建物の中に複数の人間の気配があるのが分かった。
恐らく、参拝者がいるのだろう。

だが、

「……っ、いい匂い……」

離れていても、すぐに分かった。中から、一際芳しい匂いが漂ってくることに。

しかも、今まで嗅いだことのない、甘くて濃い美酒のような……頭がくらくらしそうなほどのものだった。

その司祭は、よほど美味い生気の持ち主らしい。もしかしたら、好みではないが極上のご馳走なのではないか……ツナは、無意識に唾を飲み込んでいた。

(……よ、よーし!)

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