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□A refusal
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そんなこんなで、上手くいかず落ち込んだり疲れたりはするが……ツナは、楽しくて充実した毎日を送っていた。

(あと少し時間あるけど、もう誰も来ないだろうし……今日は早めに閉めちゃおうかな)

先ほどの客も常連で、いつもこの曜日の一番最後に来ることが多い。もう店を閉める準備を始めても大丈夫だろう……と、ツナが考えていた時だった。

「……あの。まだ大丈夫っすか?」
「へっ…!?あっ、こ、こんばんは!」

店先に出て、道路の方へ背を向けながら営業終了の札を立てていると……その背後から声を掛けられたのは。驚いて変な声を上げてしまったことを恥じながら、慌てて振り返ると……

(あ…この人……)

そこにいたのは、初めての患者ではなかった。ツナが、何度か診たことのある男だ。
まだ三十代くらいだろうが、あまり手入れをしていない髪や髭のせいか少し老けて見える。中肉中背で、いつも地味な服装をしていて……何の仕事をしているのか、全く分からない男だ。

常連というほどではないが、これまで何度かここを訪れたことがある。曜日や時間帯などは、いつもバラバラだ。

「……今日は、もう終わり?」
「あ、いえまだ大丈夫です!どうぞ中へ!」

ぶっきらぼうに聞かれて、慌てて中へ招き入れる。いつも無表情で、あまり喋らない男なのだ。謎も多いし、以前からツナは少しだけ男が苦手だったりする。

だが、客にいろんな人間がいるのは当たり前だ。男は施術を望んでいるのだから、それにしっかりと応えなければ。

(あ、立て札…まぁ良いか、どうせこの人で最後だろうし……)

“本日は終了しました”の札を立てたまま入ってきてしまったと気付くが、ツナは気にしないことにした。

……それが後に、間違いだったかもしれないと後悔することも知らないで。

いや、例えそれがなかったとしても……どうにもならなかっただろうが。

「………」

先導するツナの後ろ姿を、男がどんな目で見ているかも………分からないまま。


***


それは、一瞬の出来事だった。

「じゃあ、ここに横になって下さい」
「………」

男に施術用の、薄いローブのようなものを着てもらって、奥にある施術台に横になるよう促す。相変わらず無言の男に、ツナはいつもよりも居心地の悪さを感じていた。

これまでに、男とはほとんど会話をしたことがない。施術中も無言で……だが男は、何故かいつもツナを指名するのだ。

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