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□A refusal
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「―――――沢田先生、どうもありがとうございました」
「はい、お大事になさってください…!」

駅前の大きな通りから少し離れた場所にある、一件の整骨院。周りにはぽつぽつとアパートが建つだけで、日も暮れたこの時間帯は人通りもかなり少ない。

そんな中で、こじんまりとしたその建物に明かりがつく様子は……そこだけが、ぼんやりと浮かんでいるようにも見えた。

「気を付けて帰ってくださいね!」
「はいはい、それじゃあまたお願いしますよ」
「お待ちしています…!」

その整骨院から出てきた中年の男を店先まで見送ってから、沢田綱吉……ツナは、ほぅと息を吐いた。

ツナは、この整骨院に勤務する整体師だ。といっても、医療白衣を着ているものの……小柄な身体に、成人しているようには見えない幼い顔立ちのため、少し不思議な感じに思えてしまう。

ツナはそれを気にしているので、院長や患者に頼りにしてもらえるよう、日々努力しようとしていた。実際に、ツナはここのスタッフの中では一番若いし、経験も浅い。

(今日は、もう患者さん来ないかなぁ……)

こじんまりとした所なので、来る人間もだいたい決まっている。今、院内にいるのはツナだけだった。

一週間のうち、この曜日の終業間際の時間帯はいつも一番患者が少なくて……そのため、のんびりとした院長はツナに全てを任せて早くに帰ってしまうのだ。

だから、最後まで患者の対応をして店を閉めるのは、ツナの役目だった。

(今日も、あっという間だった……)

中へ戻って、誰もいない静まり返った職場を見回す。

大学を出て、整体師として働きだしてまだ一年も経っていない。経験が浅く、さらには生来おっちょこちょいな体質のため、誰が見てもツナは出来が良いとは言えず何事においても危なっかしかった。

だが、いつも一生懸命な姿や暖かい人柄からか……スタッフからも、患者からも好かれたり気に掛けてもらったりしていた。実際に、ここを訪れる患者の中にはツナを指名する者も多い。

そんな時は、施術よりもツナとのお喋りがメインになったりしてしまうのだが……

(今は、それでも良いや)

それで、普段苦労をしているお爺ちゃんやお婆ちゃん、お父さんお母さんの日頃のストレスが、少しでも解消されるなら有り難い話である。

だから、自分はもっと経験を積んで腕を磨いて、患者さんの心と身体を解すことができれば……と、そう思っているのだ。

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