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□Justification
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ああ、そうか……ツナは絶望した。男は確実に分かっている。
分かった上で、口で言わせようとしているのだ。
「っ、ぁ……」
本当なら、恥ずかしくて言える訳がない。本当に、どうしてこんな所に来たんだろう……と自分でも良く分かっていないのに。
それに、分からないことが……この言葉では言えない衝動を、余計に掻き立てているのかもしれない。
「言ってごらん……どこが苦しい?」
「っ、っ……」
やはり変わらない笑みを浮かべた、だがぞくりとするような鋭さの混じった男の視線。それに真っすぐに射ぬかれて、
(もう、ダメ……)
ツナは、観念して口を開くしかなかった。こちらも、もう限界なのだ。
「っ、む…むね、が……」
「胸、かい?」
それでも、男の顔は見られないまま、か細い声でそれだけを紡ぐ。痛いのか苦しいのか、はっきりと言わなかったが……男は、それだけで分かったらしい。
「ふぅん……じゃあ、少しマッサージをしてみようかな」
「ぁ……!」
診療台に座るツナに近付いて、その細い肩を軽く押す。それだけで、彼は簡単に仰向けに転がされてしまった。
覆い被るように覗き込まれて、ツナは慌てて目をそらす。
「痛かったら、言うんだよ?」
「っ……!」
軽く、本当に軽く胸元に触れられただけで……大げさなくらいびくついてしまった。その大きな、だがすらりとした男の手の感触に……この間のことを思い出してしまったのだ。
あの日の、何とも言えない感覚を……
「っ、ん……!」
腹部から胸元に、胸元から肩甲骨へ抜くように手が動く。別に痛めてる訳でも凝っている訳でもないから、苦痛は少しもなく心地いい。
そう……別にツナは、胸やどこかが悪い訳ではないのだ。
だが、
「っ、ぅ……!」
気持ち良いはずのマッサージなのに、素直に喜べない。ツナの表情には、まだもどかしさややりきれない様子が滲んでいた。
はっきり言って、物足りないのだ。男が下手な訳じゃない。ただ、
「っ、せ…せん、せ……」
「………」
「先、生……!」
我慢できなくなって、情けない声を上げてしまう。対する男は、やはり知らないフリをして、
「うん?痛い?止めようか?」
「ち、違っ……」
やはり、全部言わないといけないのだろうか。胸元を、優しく撫でられるだけでは駄目なのだ、と。
もっと……
「やっぱり、これだと分からないから……直接見て、触ってみようかな」
「ぁっ……!」