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□Justification
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互いに、ただの口実だということは……

始めから、分かっていたはずだった。

だが、

本当の、その意識の奥にある真意は―――――


***


夕刻。といっても日はもうほとんど落ちて、辺りが暗くなる頃。

場所は、仕事帰りの人間が多く行き交う駅前の大通りから、少し脇道に入った辺り。
ぽつぽつとつき始めた街灯の明かりしかない、人通りもあまりない静かな所に……一つだけ、明るい光を灯す建物があった。

一階建ての、ぽつんと佇むそれは民家ではなく、

「―――――先生、どうもありがとうございました」
「はい、お大事になさって下さい」

自動ドアが開いて、中から中年のサラリーマンらしき男が出てくる。それを見送るように顔を覗かせたのは……まだ若い男だった。

切れ長の瞳に、ノンフレームの眼鏡。シャープで整った顔立ちは、さぞや異性にもてるだろう。
何かスポーツをやっていたのか、長身で綺麗なラインの身体を医療白衣に包んでいる。

「それじゃあ、またお願いしますよ」
「ええ、お待ちしています。では……」

仕事帰りという割にはすっきりしたような、リラックスした表情の中年男性を見送ってから……男は建物の中へ帰っていった。

普通の店ではなく、病院でもない。自動ドアのすぐ脇に取り付けられた案内を見ると……ここは、どうやら接骨院のようだ。

平日の終業時間前だからか、先ほどの男で患者は最後のようで……白を基調にした清潔な院内には、その若い男しかいない。

「………」

男はしばらくがらんとした院内を眺めた後……もう閉めることにしたのか、営業終了の立て札を持った。

患者と接している時はにこやかだったが、それでも顔立ちのせいか冷たい印象を受ける。それが、今のように無表情になると余計に際立った。

そんな男が、疲れなのか軽くため息を吐きながら、札を入り口に立てようとした……その時、

「……ぁ」

前方から微かに聞こえた、吐息のような声に……男は動きを止めた。顔を上げてみると、

「………」
「っ……!」

視線が合った瞬間、相手が小さな身体を大きくびくつかせる。と同時に、頬を赤らめた。

対する男も、少し驚いたように目を開いて……だがそれは一瞬で、

「……やぁ、久しぶりだね」

目を細めて、にこやかに笑った。ただ、やはりそれは冷たくて鋭い印象を受けるもので……それだけでなく、どこか愉しむような、含んだような何かが混じっていて。

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