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□歪愛
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何が嘘で、何が本当なのか。
何が正しくて、何が間違っているのか。
たとえそれが、誰にも分からなくとも構わない。
全ては、確かなことは―――――たった一つ。
それは、そう……とうの昔に―――――
***
『―――ツナさん』
―――やめろ―――
『なぁ、ツナ―――』
やめろ……近寄るな―――
『ツナ、分かっているのだろう?』
うるさいうるさいうるさい―――
『外の世界は危険で、汚くて―――醜い。ここにいるのが、一番の幸せなんだよ?』
―――嘘だ。そんなのは嘘だ。
お前らが、お前らが奪ったんだ。何もかも、全部―――
『ここなら一生平和に、楽しく暮らせるんです。僕も、彼らも……お前を愛してやれる』
黙れ―――そんなものいらない。少しも欲しくない。
俺が欲しいのは―――
『ツナさん…俺は、貴方が……』
やめろ――そんな目で、見るな―――
俺を、もう―――――
『―――分かってるんだろう?綱吉』
やめろっ…黙れ……!
『さっさと認めちまえ。お前は―――』
黙れ黙れ黙れっ!
その先を言うな!
その先を―――――
『お前はここから……俺達から、一生逃げられねぇんだよ』
「―――――!!!」
暗い―――微かな月の光が襖の隙間から差し込むだけの、暗い部屋の中。
「―――っ、はぁっ…はぁっ……!」
勢い良く茵から跳ね起きた少年は……激しく脈打つ胸を、手でキツく押さえ付けた。
まるで全力疾走したかのように苦しい呼吸。全身汗だくで、顔や身体にまとわりつく髪や、唯一の衣服である単衣が酷く気持ち悪い。
「っ……!」
それだけではなかった。鉛のように重い身体、鈍く痛む奥深く。そして……熱。
「っ、は……!」
何とか自身を抑えつつ、ゆっくりと辺りを見渡す。
夜も深い時刻。いつもと変わらない部屋。
自身は、今まで眠っていた―――
「っ、くそ……!」
違う。そうじゃない。
「……ゆる、さない……」
呼吸が少しずつ収まるにつれて、奥底から沸き上がってくる感情。
「っ、許さない……!」
自分の目的は。望みは。
そして―――存在意義は。
「絶対に、許さない―――――!」
たった一つ。ただ、それだけのために―――――
***