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□Repetition
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やがて、

「……ずいぶん…遅かった、ね……?」

やがてそう放った声は、酷く弱々しくて。

そしてゆっくりとザンザスに向けられた瞳は、どこか……泣きそうな色をしていた。

「………」

その時……それまでぴくりともしなかったザンザスが、音もなく動いた。

「わっ…!?」

自分の部屋だというのに所在なさげに立っていたツナに一瞬で近付くと、その細い手首をつかむ。そして、驚きに身体を固まらせた彼の腕を引きどこかに向かって歩き始めた。

「ちょっ、ザンザス…!?」
「………」
「痛っ…さ、先に報告をっ…!」

焦ったように上がる声も無視して向かうのは、部屋の奥……寝室へと繋がる扉。

それに気付いたツナは何とか手を振りほどこうとするも、強い力に引きずられるように連れて行かれて……不意に、その異変に気が付いた。

距離が縮まった途端に、嫌な匂いが鼻を刺したのだ。

「ザンザスっ…血…!血がっ…!」

暗くて分からなかったが、良く見れば彼の隊服には所々に何かがこびり付き、裾からは僅かに雫が滴っていた。すでにどす黒い色に変わりつつある、そして独特の匂いのそれは紛れもなく……

「怪我、したのか…!?なら、早く手当てを…!」

様子がおかしいのは、そのせいだったのだろうか。

だがツナは、そう言ってすぐ自分の言葉に後悔した。

同時に、背を向けていたザンザスが振り返り、華奢な身体をさらに引き付けて、

「ザンっ…!」
「黙れ。これは……俺の血じゃねぇ」
「………!」

そこで初めて発された言葉に、ツナがどれほどの衝撃を受けただろう。

いや、分かっていたはずだ。ザンザスが、戦って怪我をするなんてあり得ないということを。

ただ、

「っ…そ、っか…そう、だよね……」

ただ、心のどこかで望んでいたのかもしれない。

むしろ、その血がザンザスのものであったなら……どれほど良かっただろうか、と。


ボンゴレファミリーの十代目を次いで早数年。日々膨大な仕事に追われながら、また常に命の危険にさらされながらも、ツナは頼もしく優秀な仲間、部下の助けを借りて何とか日々を送っていた。

歴代のドンボンゴレの中でも一、二を競うほど温厚で、また争いを好まないマフィアらしからぬボス。誰にでも優しく、人を殺めることなどあり得ないと……人々は彼を讃える。

だが……


「わわっ、だからっ…ちょ、待てってば…!」
「………」
「いてててっ…もっ、ザンザスっ…!」

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