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□An excuse
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ザンザスにそんなことを言っても、ただ怒らせるだけかもしれない。それでも、ツナは彼やその仲間達にたくさん助けてもらったのだ。

だから、一言でも良いからお礼が言いたくて。

それに、

「こんなに、大怪我して……その、もし俺にできることがあったら……」

やはり、仲間が傷付くのは酷く心が痛む。少しでも役に立てればと、だからヴァリアー達のお願いを聞くことにしたのだ。
ザンザスは絶対に嫌がると思うけれど、それでも……

その時、

「―――おい」
「ぇ…?っ、ぁ……!」

それまで視線を外へ向けたまま黙っていたザンザスが、いつの間にかこちらを向いていて。本能的な何かが走りどきりとした瞬間、ツナは素早く伸びてきた手に手首をつかまれていた。

「ざ、ザンザス…?」
「……やはり、テメェの目的はそれか」
「ぇっ…?ぃ゙っ…!」

強い力で椅子から引っ張り上げられて、体勢を崩しザンザスの上半身に倒れ込んでしまう。慌てて起き上がろうとするが、手を痛いほど強くつかまれて動くことができなかった。

「い、痛っ…ぁっ…は、離して…!」
「それで馴れ合ったつもりか?こうやって、俺に近付く機会を狙っていたのか」
「なっ…ち、違うっ…俺はそんな…ぁぅっ…!」

もう片方の手で乱暴に顎をつかまれて、さらに顔を近付けられる。鋭くて血のように赤い瞳に、まっすぐに射抜かれた。

ザンザスは、ツナが彼を自分の懐に引き込もうと、そのために世話役を引き受けたとでも思っているのだろうか。そんなことを考える男ではないはずなのだが。

それに、目の前のザンザスからは怒りや嫌悪といった感情は見られなかった。むしろ、どこか愉しんでいるような……

「っ……!」

だがそれだけでなく、自分を見つめるザンザスは……今にも射殺しそうな視線をしているのだが、先ほどとは違う……別の獣じみた色をしていて。

「何が望みだ?ボンゴレ十代目の座に就き、俺を従えることか」
「だから、俺はっ…!」
「言い訳が欲しかったんだろう?こうして、俺に近付くための」
「………!」

違うというのに伝わらない。それが酷く悲しくて、だがどう言えば良いのか分からなくて、ツナは言葉に詰まった。

自分はお礼を言って、謝って、介抱をして……彼に何を期待していたのだろうか。

いや……

「っ……!」

ツナは、自由な方の手でザンザスのそれをつかむと、逆に強く見つめ返した。だがその表情は、すぐに切なげなものに変わる。

そして、

「し、心配することが…そんなにいけない……?」
「………」

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