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□An excuse
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並盛町の一角にある、そこそこ大きな病院。
その中の、とある病室の一つで。
「っ……!」
「………」
ツナは、これ以上ないほどの命の危険を感じていた。その表情には血の気がなく、だらだらと冷や汗を流すほど。
まるで、獰猛な肉食獣を前にした小動物のような。
それもそのはず、
「………」
ツナはその病室に一つしかないベッドの、すぐ側の椅子に座っているのだが……その目の前にあるベッドには、とある人物が寝ていたのだ。そちらの方を、先ほどからチラチラと見ては一人で嫌な汗を流している。
その人物というのが、
「……おい、ドカス」
「ふぇっ…!?な、なに…!?」
「喉が渇いた」
「ぇっ…ぁっ…み、水!水だね…!」
病室にいるからには、どこか怪我をしていたり病気であるはずなのだが……そんなことを微塵も感じさせないくらい尊大に、ふてぶてしく寝そべっている男が一人。
「あ?喉が渇いたって言や酒だろうが」
「はぁっ!?だ、駄目に決まってるだろザンザス!大怪我してるのに…!」
歳はまだ二十代前半だろうか。漆黒の髪に血のように赤い、そして射殺しそうなほど鋭い瞳。誰も寄せ付けない、高圧的なオーラを放つのは……イタリアのマフィア、ボンゴレファミリーの特殊暗殺部隊ヴァリアーのボス……ザンザスだった。
水の入ったグラスを差し出せばそう吐き捨てる彼に、ツナは思わず突っ込んでしまう。そして、すぐに我に返った。
「ぁっ…!」
「………」
(や、やややばっ…!)
あのザンザスに、思わずとはいえ突っ込みを入れてしまうなんて。カッ消される!と、ツナは身体を強張らせごくりと唾を飲み込んだ。
だが、
「………」
ザンザスは、しばらくの間本当に射殺すのではないかと思うほどツナをキツく睨み付けた後、
「チッ……」
「ぁっ……!」
彼の手から乱暴にグラスを奪い取ると、一気に飲み干したのだった。
(ま、まさか…言うとおりにするなんて……)
対するツナは、信じられないといった様子でぽかんと口を開けたままだ。
だが……これこそが、この奇妙な状況の理由だったりする。
***
ザンザスがこの病院に入院したのは、今から数日ほど前だ。いや、ザンザスだけでなく……ここには、とある理由によりツナの仲間がたくさん入ることになったのだ。
アルコバレーノの呪いを解くための代理戦争。ツナ達を始めそれぞれのファミリーの面々は、始めはライバルとして戦っていた。