Main4

□鎖縁
4ページ/10ページ



だが、刄のように鋭い視線と身にまとう雰囲気が……ただの高校生とは違うことを感じさせられた。

「もう良い、下がれ」
「はい、失礼します」

促されるようにして部屋の中へ入ると、目の前にいる男はツナを案内してきた男にそう命じる。すぐに障子が閉められて、二人きりになった。

しばらくはお互いに何も話さなくて、ただ重い沈黙だけが続く。

やがて、

「……何故、俺の前から姿を消した」
「っ……」

先に口を開いたのは、男の方だった。その口調は低く鋭くて、雰囲気から酷く怒っているのが分かる。

「それ、は……」

ツナの方は、男の顔を見ることができずにうつむいた。

だがしばらく視線をさ迷わせた後、意を決したように、

「俺は……もう、ボンゴレの人間じゃない」
「………」
「これからは、一般人として暮らしていくことに決めた。だから……」

ボンゴレの人間―――ツナはそう言った。

そう……実はツナは、裏社会の頂点に立つボンゴレの……朝里組の血を引く、唯一の人間だった。というのも彼は……九代目の、たった一人の息子なのだ。

跡取りの存在……それは、今まで表に一度も知らされていない。だが本当は、理由は分からないが九代目がその存在を隠して、限られた……本当に信頼できる人間にしか知らせていなかったのだ。

それでも、どこからか情報が流れたのか……噂ではたった一人、まだ中学に上がったばかりの息子がいると言われていたそうなのだが。ただボンゴレが頑なに表に出さなかったため、その真意は明らかにされなかった。

それがツナ……朝里組十代目を継ぐ、朝里綱吉だったのだ。今名乗っている“沢田”は、母親の旧姓なのである。

この春の九代目の死後、ツナは事情があって裏社会から姿を消した。そして沢田綱吉として、普通の生活を送っていたのだ。
元いた街の隣にある、並盛町のアパートで独り暮らしをして……一般人として中学校に通って。

だが、

「だからこの家とも、もう関わることは…」
「……そんなことはどうでも良い」
「っ、ぁっ…!」

その時だった。黙っていた男が、目を合わせようとしないツナの顎を乱暴につかみ上げ、片方の手首を捕えたのは。

「い、たっ…痛いっ…!」
「俺が聞いているのは、何故俺から離れたということだ」
「そ、なっ…俺は、ぁぅっ…!」
「黙って姿を消して、俺のいない場所で生活して……ばれないとでも思ったか」

骨の軋む音が聞こえるのではないかと思うほど強く握し締められて、ツナの表情が苦痛に歪んだ。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ