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□鎖縁
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放たれた言葉は、たったそれだけ。だが少年には、それだけで充分だったらしい。

むしろ、何を言われるのか始めから分かっていたようで……はっきりと、眉が寄せられ口元が引き締められた。そこには、強い拒絶が感じられる。
そして、警戒したようにじりじりと後退った。

「っ、どうして…?俺は、もう……」
「貴方が家を捨てたとしても関係ありません。あの方が、貴方自身を望んでいるのですから」
「っ、だからどうしてっ…!」

淡々とした口調に、幼い表情が苦しげに歪む。突っぱねようとしても言葉にならなくて、ゆっくりとこちらに向かってくる男に気圧されていた。

そして、

「我々と一緒に来て頂きます……ボンゴレの姫君」
「っ……!」

その呼び名に感じたのは……深い悲しみと、絶望だった。


***


ボンゴレファミリー……元はイタリアのマフィアで、今は“朝里組”と呼ばれる日本の裏社会の組織だ。
とはいえ日本には有名で酷く恐れられている、いわゆる暴力団というものがたくさんあるのだが、ボンゴレは世間一般にはほとんど知られていない小さな組織だ。

だが……ボンゴレは、その裏の世界の人間ならば知らない者はいないというほど強力な存在だった。組織自体は小さく、巨大な組に比べれば所有する領域も狭く団員の数も少ないのだが……その実力はトップクラスと言われていて。

しかも特殊なのは、彼らは自分達の領域の、影の自警団のような役割をしているということだ。何よりも一般人の安全を守るため、そのため他の組織が領域を侵し住民を脅かそうものなら一切容赦はしない。
そしてもっと重要なのは、ボンゴレは他の組合同士の仲を取り持ったり、抗争が起こった場合には、領域外だとしてもその鎮圧をも行うという……異例の行為を行う組織だった。

そのためボンゴレは、日本の裏社会のトップに君臨する存在だと言っても良い。

もちろん、それに不満を持つ組織はたくさんいる。だがボンゴレは強力な戦闘集団である上に、実力のある巨大な組と多く同盟を結んでいて全く手出しができないのだ。

ボンゴレに目を付けられれば最後、完膚なきまでに叩き潰される……そう言われ恐れられているほど。

だが……

……その最強のボンゴレが、数ヶ月ほど前に消滅したという噂が流れた。

組のトップである九代目が、病のためこの世を去ったため―――と。

詳しい事情は分かっていない。何せ表にはほとんど現れない組織であるため、裏の世界の人間でさえ詳細を知ることは難しいのだ。

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