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□An escape
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強く力を入れれば折れてしまいそうに細い腕や腰、そして足。薄い胸板に小ぶりな尻。
日に焼けない肌は白く触り心地が良さそうで、特に腰から足にかけてのラインは滑らかで女の子のようにも見えた。

(本当にやだ…中三にもなって、こんなカラダ……)

ツナは、成長期を迎えているはずなのにほとんど変化のない自分の身体に、ずっとコンプレックスを感じていた。伸びない身長、筋肉の付かない体躯……同学年の男子生徒は、ほとんどがもう同い年とは思えないほど背も高く、立派な身体をしているというのに。

「………」

ちらりと視線を下げて、自分の下半身を眺める。そこには、まだ小さく薄い色をした、全てが幼い自身がこじんまりと収まっていて。

父親はほとんど家にいないので、成人男性の性器を見る機会は少ない。だが学校の手洗いだどで見る同級生のそれは、大きさも色もツナのものとは全く違っているのだ。
対する自分のそれは、握ればすっぽりと隠れてしまい下生えもほとんど生えていない。

同じ男として、未熟な身体を見られるのは恥ずかしくて、心底嫌で……だからツナは、この旅行で入浴が一番嫌だったし、絶対に一人でこっそり入ろうと決めていた。
そのためクラスメイトの獄寺や山本に誘われても、体調が悪いからと断ったのだ。

そして皆が寝静まった今、こうして一人でやって来たのだった。お風呂は好きだし、温泉と聞いてどうしても入りたくて。

「……よし」

脱衣を済ませて、念のため腰にはタオルを巻く。そして、大浴場のドアをゆっくりと開けた。

途端に、こちらへ漂ってくる熱気。中は湯けむりに包まれ、白く靄が掛っているようで。
見渡すと、洗い場は広くてたくさん設けられている。そして奥には、大人数でも入れる大きな浴槽があった。

(早くしなきゃ……)

のんびりと入っている時間はないので、先に髪と身体を手早く洗う。固く絞ったタオルで軽く頭を拭いて、もう一度腰にタオルを巻くと湯船に向かった。

そろそろと足を浸けて熱さを確認した後、ゆっくりと腰を下ろしていく。肩まで浸かってようやく、ツナは大きく息を吐いた。

(良かった、誰にも見られずに済んで……)

ずっと気にしていたせいか、疲れが取れていくような感じがする。

あまりの気持ちよさに、ウトウトしていたツナは気付かなかった。ツナ以外の気配が、静かにこちらに近付いていたのを。

(でも、そろそろ上がらないと……)

もしかしたら部屋の誰かが起きて、いないことを気付かれているかもしれない。だから早く戻らなければならないのだ。

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