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□An escape
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並盛中学校の三年生は、今日から修学旅行だった。
早朝から学校を出発して、昼間は伝統工芸の盛んな町でいろんな体験をしたり、古都を自由に歩き回ったり。
そして今日から二泊する宿は、それほど大きくはないが小奇麗な旅館で。夕食後にはレクリエーションなどもあり、全員で楽しい時間を過ごすうちにすぐ就寝時間になってしまった。
早く寝ろとは言われていたが、せっかくの宿泊行事。それも修学旅行だ。
怖い話をしようだの、朝まで起きていようだの言い合っていたのだが……昼間はしゃいでいたからか、意外にもその部屋のメンバーは日付が変わる頃にはすっかり眠ってしまった。
ただ一人、
「………」
敷き詰められた布団の、その中の一つで丸くなっていた一人の生徒……ツナを除いては。
電気が消えて真っ暗な部屋の中、所々から寝息やいびきが聞こえるだけの静かな部屋で。ツナはなるべく音を立てないように起き上がると、そっと布団の中から抜け出した。
そして自分の荷物の中をごそごそと漁って何かを取り出した後、そろそろと出口に向かって進んでいく。
真っ暗のため、あちこちにぶつかりそうになりながらも、何とか扉までたどり着くことができた。
「………」
もう一度部屋を確認すれば、皆ぐっすり眠っていて起きる気配はない。次いで静かに扉を開けて廊下を確認しても、そこには誰もいなかった。
(……よし)
誰にも見られていないことを確認すると、ツナは荷物を持って一人で部屋を抜け出したのだった。
その後ろ姿を、どこからか複数の目が見ていたことにも気付かないで。
***
もう宿泊客の誰もが寝静まったのか、全く人気のない通路を進んでやってきたのは……大浴場だった。ツナの腕には、替えの下着とタオルが抱えられている。
(先生も…いないよね……?)
脱衣場の扉を開けて恐る恐る確認したところ、教師どころか他の客もいないようで。ホッとしたように中に入ると、ロッカーに荷物を置く。
そして、着ていた浴衣を脱ぎ始めた。
(良かった、誰もいなくて……)
本来なら同じ部屋の人間と一緒に、それも就寝時間までに入浴しなければならないのだが……ツナは今日、その規律を破った。始めから一人でこっそりと入るつもりで、皆が寝静まるまで機会をうかがっていたのだ。
何故、そこまでして一人で入浴したいのかと言うと、
(だって、こんな身体…見られたくないもん……)
帯が解かれて、肩と腕に引っかかっただけの浴衣が床に落ちればほっそりとした身体が現れる。