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□Struggle!
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「―――と、いう訳でっ!文化祭の食品バザーは“コスプレ喫茶”に決定ーっ!」
(―――ううう嘘だろぉぉぉぉっ!?)
始まりは、今から約数週間前のことだった。
***
雲一つない、良く晴れ渡ったある日のこと。
今日は、並盛高校の文化祭の日だ。どこにでもある、別段目立った特徴のない普通の高等学校だが学校行事はそれなりに熱心で、特に年に一度の文化祭はかなりの盛り上がりを見せる。
正門には美術部渾身の作である巨大なアーチが客を出迎え、校舎までの道のりには各クラスやクラブ、有志による食品バザーの屋台がずらりと並ぶ。グランドでは軽音部などのコンサートが行われるのか、大きなステージが設けられていた。
もちろん校舎も派手に装飾されて、いたる所の窓から各屋台やステージの宣伝である大きな垂れ幕が掛けられている。校舎内でも食品店や個展など、様々なイベントが行われる予定だ。
そして……ここ2−Aの教室は、まだ開店直前にも関わらず異様な熱気に包まれていた。
というのも、コスプレ喫茶を行うため生徒達がそれぞれが奇抜な格好をしているからだ。
定番のものとしては、女子はメイド服やナース服、男子は執事の姿など。さらには有名キャラクターのコスプレやマニアックなものまで、一人ひとりが違う衣装を着ているのだから圧巻である。
提供する商品としては、たこ焼きとか焼きそばなどベタなメニューなのだが……給仕担当だけでなく、何故か調理担当の生徒もコスプレをしているという徹底ぶりだったりする。
年に何度もない、少しくらい羽目を外しても怒られない日。いつもと違う空気に生徒の誰もが浮足立ち、思い切り楽しんでやろうという気合に満ち溢れていた。
ただ、
「ちょっと沢田ーっ!」
「っ……!」
その中で全く楽しめていない、むしろ絶望のどん底で今すぐ家に帰りたいと思っている人物がたった一人。
「沢田ってば!準備できたの!?」
「っっ……!」
クラスの実行委員(女子生徒)が、衣装に着替えるためのスペース(しかも男子用)を問答無用で覗く。
そこには、
「やっだぁ!すっごく似合ってるじゃない!」
「ぅぅぅ……!」
何とも可愛らしい……ウエイトレスがいた。正確には、ウエイトレスの姿をした小柄で華奢な生徒が一人、うつむいて床に座り縮こまっていたのだが。
コスプレがウエイトレス?普通ではないか、と思うなかれ。
ピンクの生地をベースにしたその衣装は目を引くような光沢があり、真っ白なエプロンにはこれでもかというほどひらひらのフリルがあしらわれている。