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□虜
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先ほどもそうだった。いきなり地下牢へ現れたかと思ったら、男は無言で綱吉を犯し始めて。
綱吉が射殺しそうな視線で睨み付けても、暴言を吐いても無反応だった。以前なら、愉快げに表情を歪めさらに執拗に責めてくるというのに。

その余裕が、今では全く感じられない。

(一体、何故……何を、企んでいる……?)

綱吉は、本当に分からなかった。

あの調教師……六道骸のことが。


***


「………」

靴音を高く鳴らしながら、黒曜の軍服に身を包んだ男……六道骸は、地下へと続く階段を降りていた。この先には、限られた人間しか入ることができない特別な牢獄があるのだ。

そして今、そこにいるのは……

「………」

凛とした表情、色香を放つ身体……敵国の秀麗な捕虜を思い浮かべて、骸は整った眉を寄せた。
それは、苛立ちなどという簡単な言葉では言い表わせないほど剣呑なもので。

(沢田、綱吉……!)

全身を駆け巡る言い様のない衝動に、骸は内心吐き捨てるのように彼の者の名前を呼んだのだった。

近頃の自分はおかしい。

敵国ボンゴレの重要人物が捕らえられ、その拷問を命じられてしばらくが経った。その拷問対象は、今までに見たことのないほど真っ直ぐな、高潔な精神を持つ人間で。

始めは楽しんでいた。まだ幼さの残る、だが艶のある身体をねじ伏せ無理やり暴いて、最も屈辱的であろう行為を強いて。
決して屈伏せずに睨み返してくる瞳も、無駄な抵抗であるのに諦めようとはしない態度も、逆に加虐心を掻き立てるだけだった。

だが……いつからだろうか。全くこちらに靡かない姿に、変わらない自国への愛と主君への確固たる忠誠心に……不快な想いを抱くようになったのは。

それは、彼を初めて拷問した時からあった。その時はただ面白くなくて、何となく不愉快で……もっとめちゃくちゃにしてやろうと、プライドも何もかもズタズタにしてやろう思っていたのだ。

だがそれでも全く屈伏することのない、さらに主君への想いを強めたその存在に……

(馬鹿げている……)

その執着心が、さらに強くなるなんて。

今では、拷問はただの楽しみなんて簡単なものではなくなってしまった。何としてもあの気高い存在を貶め、めちゃくちゃにして自分以外のことなど考えられないように……

それから……

(………)

それから、どうしようというのだろうか。

自分は、あの存在にどうなってほしいというのだろうか。

(本当に、馬鹿げている)

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