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□虜
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そして綱吉がまだ正気を保ち、何とか生き長らえているのは……祖国への想い、いや……唯一の主君である国王への忠誠心だけだった。
だが、
「………」
敵国に捕らえられた時から、死ぬ覚悟はできていた。元から国のために捧げた命、死への恐怖などない。
幼い頃から厳しい訓練の下で育てられたため、拷問などにも何の恐れもなかった。それが苦痛ではなく、快楽での責め苦だったことは予想外だったし、屈辱や犯されることへの恐怖はあるが……一度どん底まで貶められた身体、これ以上墜ちることはないと思う。
だから綱吉の中にあるものは、変わらぬ主君への忠誠と……一刻も早く、死をもってこの屈辱から逃れ、祖国を汚した罪を償うことだけだった。
……それだけ、だったはずなのに。
「っ……!」
ここ数日、綱吉の心には得体の知れない感覚が渦巻いていた。自分を凌辱する男……調教師と言ったか、その男が……妙なのだ。
ここへ捕らえられた時からその男は綱吉を辱め、これまでに拷問という名の凌辱を繰り返してきた。冷酷でいて残忍、綱吉を嬲る手は容赦なく……狂いそうになっても、失神しても構わずに責め続ける。
彼が直接手を下さなくとも、能力である幻術、薬や玩具など、あらゆるものを使って辱められた。複数の部下を使い、めちゃくちゃに犯させる時もある。
血など通っていないのではないかと思うほど、冷え切った氷のような男。
だが、
「………」
その男がおかしい。綱吉を犯し、どこまでも責め立て追い詰めるのは変わらない。だがその表情が、雰囲気が……以前と違うのだ。
無表情、と言えば良いのだろうか……何を考えているのか全く分からない。
もちろん、これまでも本当か嘘か分からない口先だけの言葉ばかり放って、腹の中では何を考えているのか分からない薄ら寒い人間だった。だがその瞳には常に冷たい色が宿り、冷たい笑みを浮かべて……綱吉を貶めていくのを、心から愉しんでいる様子が感じられたのだ。
だがここ数日は、ぞっとするような無表情で……何を言うこともなく、淡々と綱吉を犯しにかかる。
本当に何も考えていない、感じることもないような……
いや、それならばまだ良いのだ。だが、何の色も宿さないように見える瞳の奥には、言葉には言い表わせない何かが確かに渦巻いていて。ぐらぐらと沸き立つような、ただならぬ感情があって。
恐い……綱吉は、初めてあの男を恐いと思った。何を考えているのか全く分からないあの男が。その瞳の奥、胸の奥底に何を宿しているのか。