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□Double-faced
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すらりとしたしなやかな身体を漆黒のスーツに包み、高級車の前に佇む姿はそれだけで誰もが惹き付けられるだろう。実際に、下校をする生徒だけではなく、道行く全ての人間が彼を凝視している。

そしてそんな男に、ツナは駆け寄ると思い切り抱き付いた。

「ディーノ義兄さまっ!どうしてここに?」
「今日は早く帰れたからな、ツナを迎えにきたんだ」
「っ、嬉しい!ありがとう!」

ディーノと呼ばれた青年。一見兄弟には全く見えない、だが美麗な青年が優しげな表情で、幼く可愛らしい弟を愛でる様子は、そこだけが現実とは切り離された空間のような感覚に捕らわれる。

「あっ、じゃあ今日はもう帰るね!また明日!」
「へっ……ああ、うん!またな!」

その光景に思わず見惚れていた友人は、ツナの明るい声で我に帰ると慌てて手を振ったのだった。

だが、

「っ……?」

(何だ…?)

一瞬、刺すような視線を感じて。そちらに目を向ければ、

「さ、乗れよツナ」
「うんっ」

そこには先ほどと変わりない、穏やかな表情を浮かべたディーノの姿。

(何か今、睨まれたような…)

だが、やはり彼に変わった様子はない。気のせいかと、男は無理やり自分を納得することにした。

そして、

「あれ…?」

義兄に助手席のドアを引かれて、そこに乗り込もうとしているツナ。座ろうと屈んだ瞬間、シャツの少し長めの袖が僅かにめくれ上がって、

「……ツナ、あんな所にケガなんかしてたっけ…?」

現れた細い二の腕には……今まで気付かなかったのだが、白い包帯が巻かれていた。少し覗いているだけなので、本当に包帯かどうかは分からないのだが。

だがそれも、

「閉めるから気を付けろよ」

ディーノによってドアが閉められ、完全に姿が見えなくなってしまったから、今となっては見間違いかもしれない。

そして、生徒を始め多くの人間の注目を集めながら、その車は颯爽と去っていったのだった。


***


「……ツナ、さっきのは友達か?」

ほとんど振動もなく滑らかに走る車内で、ゆったりと座り運転をしながら、ディーノは助手席に座るツナに尋ねた。穏やかに、笑みを崩さないで。

「うん。今学期から同じクラスでね、いつも一緒に勉強したり遊んだりするんだ」

対するツナも上機嫌に答える。ディーノがいるのが嬉しいのだろう。

「そっか、そりゃ良いことだな……けど」

すると、それまでにこやかだったディーノの表情が、少し固く、真剣なものに変わった。

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